colore

□【colore】第71話〜第105話
2ページ/37ページ

世界は思っていた以上に多彩に溢れていた

…だけど、本当に欲しい色は見つからない

もう見つからないのかな





【第71話】





『さすが9代目
あの頃のままだ…』


みちるは深く息を吸い込んだ

8年前住んでいたアパートは、外観が少し古くなった印象はあるものの、当時のまま
それは9代目の計らいだった

元々古い鉄筋アパートで、風が強い日や地震では大袈裟な程揺れ、寒い冬は外並みに冷え込んだ

そのせいか、3階建てだが住人はみちると悠成しか居なくて、何度も9代目からは一緒に古城に住もうと誘われた

しかし悠成はいつもやんわりと断り続け、結局移り住む事はなかった


普通とは違う、マフィアとして生きていくであろうみちるに、悠成は少しでも多くの市民との交流を持ち、関わる事で、広く大きな視野を持って欲しいと考えていた
独りではないと知って欲しかった

護る強さを持って欲しかったのだ



『懐かしいな』

自室として使っていた、リビングの隣の部屋

今では小さなベッドに、出窓に置いた花瓶

当時のまま脱ぎっぱなしの服を見て、みちるは目を細くした

ふと目に留まった、壁に掛けられたドレス


XANXUSと初めて行ったパーティーで着たドレスで、みちるは胸の奥が一瞬締め付けられた気がした


『……過去だよ、過去
もう目覚めないんだから、居ないのと一緒じゃない』

みちるは決意するように、強めに発した


目覚めない…
XANXUSは9代目により、氷柱の中眠り続けている
もう二度と溶ける事のない氷の中で…永遠に



――――――――――



「もっとゆっくりしていけばいいじゃないか」

明日、日本に帰国する事を9代目に言うと、心底寂しそうに眉尻を下げた

『また来ます
もう、ヘーキですから』

ニッコリと心からの笑みを見せるみちるに、9代目は頷きながら微笑んだ


「さて、みちる
君にお願いがあるんだ」

9代目はそう言うと、すぐ側にいた部下に何か目で合図した
すると部下は軽く会釈をし、鍵のかかる頑丈な棚から大切そうに慎重に何かを取り出す

『…!』

「これは君に持っていて欲しい
これは、君が持つ事に意味がある…」


それはみちるの愛武器の銃

チェーンに通した南京錠の鍵を、みちるにそっと掛ける9代目

みちるはジッと9代目の瞳を見つめていた






→第72話へ
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ