台本を思わせる薄い冊子を読むルルーシュの凄まじいしかめっ面に、彼女は思わず声をかけてしまった。
「ルルーシュ何読んでるの?」
「R2の脚本を読んでいる」
「あーる……ツー?」
『って何それ?』と言いたそうに彼女は眉を寄せた。
「コードギアスの続編のことだ。
どうやら俺は記憶を失ってるらしい」
「え?!
あたしのこと忘れちゃうの!?」
信じられない!と言いたげな世界の終わりを迎えたような彼女の顔にルルーシュの胸がズキリと痛む。
彼女に脚本の内容を見せないようにパタリと閉じた。
「『多分』だ。
確定情報じゃない」
ルルーシュはそれが確定情報だということを知っていた。
嘘を口にしたのは、彼女の悲しむ顔を見たくなかったからだ。
だが、彼女は世界の終わりのような悲壮な表情から一変、陽気な笑顔を見せる。
自身の胸をドンと拳で叩く彼女の仕草は頼もしかった。
「大丈夫!
あたしが愛の力でルルーシュの記憶を呼び戻してあげるよ!!」
「愛の力ってお前な…」
嬉しさが込み上げると同時に、くすぐったくなったルルーシュはサッと彼女から視線をそらす。
C.C.がどこからともなくニョキッと現れた。
「愛の力か」
ルルーシュが「うわっ! お前どこから!!?」と驚きの声を上げた。
最初から聞いていたような顔でC.C.は言う。
「失った記憶を愛の力で呼び戻す、か。
それは的を射ているかもしれないな。
おとぎ話では、想いを込めた口づけが呪いを砕くらしい」
頬を染め、ルルーシュは「口づけ……か」と呟くものの、すぐに首を振った。
「ダメだダメだ!
俺達のは健全な付き合いなんだ!」
彼女が瞬時に真っ赤になる。
「え! やだあたし達付き合ってたの!?」
慌てふためく二人にC.C.は他人事のように涼しげな顔で話題を変える。
「仮に、もし私がルルーシュの記憶を呼び戻す役割につくことになれば、キスではなく頭突きか張り手をお見舞いしてやろう。
どうだルルーシュ?
素晴らしい案だと思わないか?」
「全力で止めてくれ」
ルルーシュの返事は即答だった。