小説

□・Brother・後編
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口を開いた途端に目に堪っていたものが流れ落ちて、それを綺麗だと思ったのは初めてだった。きっとこの先この人が流す涙だけはいつも綺麗だと思うのだろうと、何故かそう確信した。



男で血のつながった兄弟にキスしたいなんて言われて嫌じゃないの、驚かないのと今更ながら聞いてみる。


泣いたのが恥ずかしいのか俯いた兄貴が微かに頭を振ったのが解って、それは良かったけどでもそれってどうなの、幾ら兄貴が人間できてるからってこんな異常事態をそんな冷静に受け止められるもんなのか?自分で行動起こしときながら随分勝手な考えだけど、普通の考えだとそうだろう。なのに、なんで?

「兄貴、俺、ちゃんと伝わってないかもしんねえからもう一回言う。俺アンタが好きでキスしたい。毎日いつでもどこでも、アンタと一緒にいて、誰にもほんとは触らせたくねえんだ」

今までずっと腹ん中に溜めてたものを吐き出すように口から言葉が溢れるのと同時に、体が徐々に熱くなっていく。


「いつも兄貴の事考えてる。朝も昼も、夜も。俺兄貴と、いや、真田さん、あんたと恋人になりたいんだ」





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