小説

□・拍手倉庫
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それは一瞬の出来事で、触れるだけの口付けは5秒にも満たず終わった。
しかし2人の距離は指一本分すら離れていない。越前の手は真田のマフラーを握り締めて離さず、そして動こうとしない。


真田の目の前にある目は、真剣だった。


「――恋人、でしょ」


その目と同じ色を持って発せられた言葉と声が真田の身体を撃ち抜く。強張っていた体と思考が弛緩し、彼は小さく息を吐いて

「……そうだ」

と答えた。



そこで初めて、日本の風習も悪くはないと越前は笑った。







 End
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