小説
□・春酔い
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寝ても覚めても忍足で一杯になるのが不思議で、戸惑いを覚えていた。しかし決して悪い気分ではない。ふわふわと心地良いそれはジローを暖かい気持ちにさせ、経験したことはないがまるで酔ったような感覚に知らず頬が緩む。
暖かな風が前髪をふわりと弄んで消え、ジローは目を開けて体を起こした。空を見上げると白い光のヴェールが彼に降り注ぎ、その中に淡い桃色がひとひらジローの目の前を横切った。それを追って動かした視線のその先に、小さな人影を見つけ目を細める。
そうしてこちらに近付いてくるその人影に、ジローの心はふわふわと揺れる。
ジローは自覚した。きっと自分は酔っているのだと。彼自身にか、それとも彼のプレイにか、それはまだ解らないけれど。そしてその酔いが覚めた時。忍足と自分の関係はきっと変わっている。
目の前に現れた忍足に再び熱くなる自分を感じて、ジローはぎゅっと目を閉じた。
END