小説
□・花開くまで
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自分の教室に戻った千石は窓際最後尾の自席に着くと空を見上げながら目を細め、口端をこっそりと吊り上げた。さっきの南の表情を思い出すと何とも言えない愉しい気持が身体中に巡って笑わずにはいられない。ぶっちゃけた話、千石は南が好きだ。恐ろしい事に、今までナンパしてきたどんな子よりも夢中になって振り向かせたいと考えている。理由と訊かれれば一言だけ言える。
(だーって南なんだもーん)
一層破顔した千石は、今度は机に突っ伏した。そのまま目を閉じて南を思い浮かべる。部活中何度も怒られ、注意させる。呆れられて、溜め息を吐かれて最後には殴られて。
(でもでも、結局笑ってくれるんだー…)
困った様な呆れた様な優しい表情。
思い出すだけで鼓動が高まる。