小説

□・花開くまで
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千石の奇行には慣れているつもりだが、やはり時々ついていけない。南は深く深く溜め息をついて千石に背を向けようとした。が、がっちりと腕を掴まれ振り向かされる。

「千石っ?」

「南、今日一緒に帰ろうね」

にっこりと浮かべる笑顔は、成程女子に受けが良さそうだ。だが口元は笑っていても、その瞳は試合で見せる射抜くような強い眼光を宿していて、南は体を強ばらせた。

「南。絶対、だよ?」

台詞の最後には普段と変わらない笑顔を見せ、にこにこと自分の教室に帰っていく千石の後ろ姿を見つめながら、南は無意識に掴まれた箇所に手を充てる。何故かじくじくとそこだけがうずいていた。



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