小説
□・その涙をこの手に
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「いい加減にせんかッ!」
今日もテニスコートに真田の怒鳴り声が響いた。振り向くと2年の部員が5人程並べられている。
「またあいつらか…今度は何をやったんだ」
近くにやってきた参謀が眉を潜めて呟く。
「なん…あいつら前科があるんか?」
自分も散々怒られているくせに、敢えてそんな風に訊いてみると参謀は頷いて溜め息を吐く。
「前にも花壇を踏み荒らしたり喫煙してみたり…その度に弦一郎が頭を下げて回っているというのに……」
改めて視線をやると、うなだれている様に見える奴らの顔はニヤニやと笑っている。恐らく真田からは見えないだろう。
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