小説

□・春花、白雪
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黒板に書かれた小さなそれには見覚えがある。文字自体は小さいのに堂々と真ん中に存在する、まるでそれを書いた人間を表している様で。真田は宛名も無いそのメッセージに従い東棟に向かった。


中学2年目の冬は例年稀に見る暖冬で、まだ3月半だと言うのに随分と暖かかった。お陰で積雪量も少なくて存分に屋外で練習が出来る事は、真田にとって嬉しい誤算だ。しかし、もうすぐ春休みを迎える今は入試や卒業式で学校全体が忙しく、それにより部活の時間が裂かれてしまう。今日も先日あった卒業式の後片付けに追われ教室に戻ると既に無人だった。夕暮れに入る前の柔らかな日差しだけが真田を迎え、心なし穏やかな気持ちで教室に入った瞬間視界に飛込んできたメッセージ。


――幸村。




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