小説
□・My song for you
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「おめでとうさん真田」
朝練後、部室で着替えていると小さな四角い箱を差し出された。何の事か解らず、目の前の仁王をまじまじと見つめ返すと、仁王は呆れ混じりに苦笑を漏らす。
「誕生日じゃろ、今日」
……言われて壁掛けカレンダーを見る。
「確かに…」
仁王に言われるまで忘れていた。今度こそ呆れた様に仁王が肩を竦める。
「別に誕生日など…大体お前こそ、よく人の誕生日など覚えて」
「お前の誕生日だからだ」
遮られた言葉に仁王を見ると、今までに無い真剣な瞳とぶつかった。そして、近い。俺の右手に小さな箱を乗せながら、仁王の顔が近づいてくる。
「…お前さんの誕生日じゃけ、覚えとるんじゃ」
「に、にお」
「真田……好きじゃ…」
触れた右手と重なる唇が熱くて、俺は思わず目を閉じた。
――目を開けたら言わなくては。
『有難う』と『俺もだ』と。
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