小説

□・My song for you
4ページ/8ページ





「おめでとうさん真田」

朝練後、部室で着替えていると小さな四角い箱を差し出された。何の事か解らず、目の前の仁王をまじまじと見つめ返すと、仁王は呆れ混じりに苦笑を漏らす。

「誕生日じゃろ、今日」

……言われて壁掛けカレンダーを見る。

「確かに…」

仁王に言われるまで忘れていた。今度こそ呆れた様に仁王が肩を竦める。

「別に誕生日など…大体お前こそ、よく人の誕生日など覚えて」

「お前の誕生日だからだ」

遮られた言葉に仁王を見ると、今までに無い真剣な瞳とぶつかった。そして、近い。俺の右手に小さな箱を乗せながら、仁王の顔が近づいてくる。

「…お前さんの誕生日じゃけ、覚えとるんじゃ」

「に、にお」

「真田……好きじゃ…」





触れた右手と重なる唇が熱くて、俺は思わず目を閉じた。

――目を開けたら言わなくては。

『有難う』と『俺もだ』と。









.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ