小説
□・Brother・前編
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「行ってきまーす!」
「行って参ります」
今日は随分いい天気だ。もうすぐ夏が来るから、日が昇るのが早くなってきてる。朝練がある関係で普通の学生より早く家を出る俺達にとっては有難い事だ。まあ寒いか寒くないかってだけで眠い事には変わりないから欠伸が止まらない。あーもう、こんな事しちゃうと後ろから・・・
「蓮二!」
「ああ、お早う弦一郎。おや、今日は赤也も一緒か」
俺の目の先に現れた柳先輩に、兄貴――いや、副部長は俺を追い越して駆け寄ると、そのまま並んで歩き出した。朝練のメニューがどうの放課後の練習がどうのと、あっという間に俺に解らない話を進める。今俺がどんな表情してるか聞かなくても解る、知らない内にズボンのポケットの中の手が拳を握ってた。柳先輩もそうだけど、幸村部長や他の先輩達と居る時の副部長は俺の事なんか全然目に入ってなくて、俺はそれが物凄く面白くない。ややこしくなるといけないから兄弟だって事は秘密だからそれは良いんだ。だけどそれを度外視しても、俺だけガキ扱いされてるみたいで・・・。まあ年齢でいえばガキだけど、それは副部長達だって似たようなもんだし。
「・・・まあそれも信じられねーけど」
「?何が信じられないって?」
突然上から降ってきた声に驚いて上を見上げるとキラキラとした銀色の髪が日に照らされて輝いていた。
「仁王先輩!何スかいきなり!」
余りの驚きに講義するとピヨっとか呟いて俺の隣に並んで歩き出す。目の前には柳先輩と副部長。
「今日は御両人揃ってご登校か」
眩しそうに目を細めながら言う仁王先輩に俺は何も応えなかった。仁王先輩の目は2人というより副部長を見つめているから。そして俺は仁王先輩の気持ちが何となく解るから余計に。
あの人の背中に追いつく様な離される様な微妙な距離で、俺達は学校迄歩いていった。