小説「湊の生涯」おお振り編
□第32話
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ルールは、3人で、ヒット2本打てば勝ちという、湊が一見不利なルールだった。で、捕手は勿論、孝介である。
百「いいよ〜」
孝「こっちもOKです」
で、勝負が始まった。打順は、阿部、百枝、栄口の順である。で、アウトになるまで交代しない。阿部は、湊の山なりボール(90km/h以下)を打った。阿部と栄口はシニア出身なので、上手い。で、阿部の打ったボールはセンターに飛んだ。
阿「さぁ、追い込んだぞ、湊」
湊「ウォーミングアップ終了。さぁ、本気で行くよ!」
阿(ふん、どうせ100km/hオーバーくらいだろ?)
しかし、阿部は度肝を抜かれた。それにつられ、百枝、栄口もびっくり…ドコーン。轟音と共にボールは孝介のミットへ。
阿(は、はえーどころの次元じゃねえぞ)
2球目は高速カーブ、3球目は高速スライダーで、阿部は三振。
百「どう?阿部君」
阿「…やばいです」
百枝には、下ギリギリのストレート。2球目は下から上ギリギリに上がるボール。最後はストレートで百枝、三振。
百「頼むわよ、栄口君」
しかし栄口も、カーブ、ストレート、ライズボールで三振。
栄「強すぎるぞ!」
阿「でも、素人の奴があんな速い球、投げられるはずが…」
湊「素人だよ。速く投げられる理由も秘密ね」
阿「くそ!もう一回勝負しろ!」
でも、次の湊の発言に一同驚愕。
湊「自分、野球部に入る!」
孝「な…お前は吹奏楽部じゃないのか?」
湊「掛け持ち」
百「野球部との掛け持ちだと死ぬわよ」
湊「いいんです。それくらい負荷を持たないと…」
孝「倒れるばかりだぞ!」
湊「男に二言は無い!自分は、高校生活を野球と送ろうと思うの。この2人と監督は面白そうな人だし、素敵な出会いの第一歩だと思う。それに孝介と一緒にいれるし」
孝「…そうか。ならいいよ。一緒に頑張ろう」
湊「うん」
こうして、湊は野球部と吹奏楽部を掛け持ちする事になった。
百「これで4人目ね。うちは新一年生しかいないチームでね、君みたいな投手がいれば勝てるわ」
湊「でも、もう1人投手がいないと勝てませんよ」
百「え?」
阿「どうしてだ?」
湊「実は、投手だと、3〜4回しか投げれないんです」
栄「どうして?7回投げれなかったの?」
孝「湊は、外野手の時は7〜9回もった。でも、投手の時は体力の影響で、3〜4回しか持たなかった。しかし、湊の出た練習試合は全勝、投手と外野手を兼任して、ようやく7回もつくらいだった」
百「全勝!?そんな馬鹿な…点はどうしたの?接戦じゃ…」
孝「大勝。いや、圧勝ですね」