ねぇ


どうしてこんなに好きになったんだろう


どうして私達は出会って


どうして恋に落ちたのかな


ねぇ先輩


どうして引き寄せられたんだろう

どうして



居残







優しい風か吹いて木々がざわめく

それは愛しい人の訪れを教えてくれる合図で


すぐに珠紀は鞄を掴んで階段を勢いよく降りる。その音に気付いた美鶴がお弁当をもって玄関にたっていた。




「美鶴ちゃん行ってきます!」


お弁当を受けとってにこりと「お気をつけて」と笑いかける美鶴を背に家を飛び出す。






鬼斬丸を壊したあの日の戦いから平和な日が続いていた。

珠紀にはこうして真弘と共に学校にいく平凡な事が嬉しくて
一緒にいられることが嬉しくて
ただただ毎日を大切に過ごす日々。







「真弘先輩!おはようございます!!」


息を切らして珠紀は自分と背丈の変わらない背を自分に向け、えらそうに仁王立ちしている愛しいその人に笑顔で言う。



「おぅ!!」


振り向き際にふっと笑顔をこぼした真弘に不覚にもドキッとする珠紀。


「あんま走っとまたこないだみたいに転ぶぞお前」


「あ、あれは忘れてください!!とゆうか本当に先輩見てませんよね!?」



先日、同じように真弘の元に走り寄ろうとした時に派手に転けて下着が丸見えになったことがあった。


「み、見てねぇよ!!お前しつこいぞ!!」


少し真弘の顔が赤くなる。


「本当ですね!?」


「いちごの柄のパンツなんてチラリとも見てねぇよ!男に二言はない!!」



「……………」

ジロリと珠紀が真弘を睨む


「あ…」



自分のミス気付いた時には遅く


「先輩のバかーーーーーっっ!!!!!」


ブンブン



「ちょ、ば、ばか!やめ、やめろって!悪かったって!


おい…危なっ…ぐへっ!!」






平凡な毎日の中でにこんな風に珠紀の鞄が振り回されることもあるが二人にはそんな毎日が幸せで一秒一秒が愛しく思える。





朝の学校は活気に溢れていてざわめきの中で別れる二人。


「じゃぁ帰りに迎えに行くから帰らずクラスでまってろよ」



「はい、じゃ、また帰りに!」


にっこり自分のクラスの前まできちんと送ってくれた小さな先輩に手を振って見送る。
周りの男子を警戒している所をみるとつい吹き出してしまう。


「…同い年だったらよかったのにな…」


ふいに暖かい気持から寂しい気持になる。


たった1つの差がこんなにもうらめしく思える。









「おはよ-珠紀ちゃん!」


「おはよ、清乃ちゃん」


相変わらず元気だなぁ〜…



「いや〜お熱いですな!毎朝クラスまで愛しの彼女を見送る…うんうん!正にNight!!ぬかりないわ真弘先輩」



いやぁ…清乃ちゃんは先輩って呼ぶのはおかしいよね…実際23なんだし…わけあってかわからないけど典薬寮から再び一緒にクラスメイトとして戻って来たのだ。




「最初は鬼崎くんと付き合ってるんだとばかり思ってたけどな〜まさか真弘先輩だったなんてね…」



「あはは…」


実際二人が”恋人”となったのは1ヶ月ちょっと前の”戦い”の後からだ。




でも本当にこの1ヶ月がすごく幸せ…

窓の外から見える空を見つめて思う



あの時先輩は「俺の女だ!」って言ってくれた。

「俺についてこい」って言われた時、私はこの人の為に信じ続けることを決めた。
この人と生きてく事を決めた。


どんなことがあっても私は真弘先輩の味方だ。







そう心の中で再び決心していた。
すると窓の外の運動場で体育の授業を受けている先輩を見つける。祐一先輩も一緒だ。

何やらまたあのキリっとした眉をひそめている。大方祐一先輩に何か言われて閉口しているのだろう。


「ぷっ…」


もう、かわいいなぁ



へらへらと窓を見つめる##NAME1##にコツコツと近づく人物。



「そんなに外が楽しそうなら貴方も外周をしてきたらどうしら?」


「!………………フィオナ先生…」


「彼氏を見守るのもいいけど授業を聞くことも大切よ」



清乃ちゃんがばつが悪そうにこっちを見ている。


「罰としてワークをやって今日までに提出しなさい」


優しい顔の割に酷なことを言う…しかも今日までって…つまり…??


「えーと…つまり…それは……

居残り作業ですか?」



「あら、大丈夫よ。あなたには優しくて心強い先輩がいるんだからそんなのすぐ終わるわ。」


そう言ってふふと笑って再び教科書を読み上げ始めた。



「……………」



…この人…絶対真弘先輩の成績知ってて言ってる…………!!




横に目をやると笑いをこらえている拓磨の姿があった。










「おい…………」



「はい……」


授業後の珠紀のクラスに二人はいた。


「なーんで俺がお前の居残りに付き合わされてんだよ」

珠紀の座る一つ前の席に後ろ向きに座る真弘が再び眉をひめて不機嫌そうに言う。


唯一の希望の拓磨はそそくさと帰っちゃうし
清乃ちゃんも二人の邪魔だとかいって気をきかしてくれた気になって帰っちゃったし
絶望的………



「それはー…ですねぇ…」


「大体フィオナ先生の時間に授業に集中してねぇなんて信じらんねぇな!!

俺だったら黒板に(先生に)穴が空くんじゃねえかってぐらい見つめる!」




むっ……

なんでそんな得意気な顔なんですか…真弘先輩



「なんですかそれ…………」

むすっとする珠紀。


「何、お前怒ってんだよ?


「怒ってません」



「?

……お前もしかして…

はは〜ん」


顎をさすってにやりとする真弘を不気味に思う。



「何ですか……」


「お前……妬いてんだろ?



先生に」


嬉しそうに珠紀の顔を覗き込んでズバリと言った。



「な、ち!違います!」




「隠すな隠すな!!

ふ〜ん、そんなに真弘先輩様を独占したいか〜。

(ちょ、先輩!ちが…)

そうかそうか!

(だから先輩違いま…)

あっはっはっはっはっ!!!


珠紀の抗議の声はまったく耳に入っていないようだ。




だ、駄目だ…!完全に先輩のペースにのまれてる…



はぁ…とあきらめて再び課題に取りかかる。まぁたいして間違っている訳でもない。
それが悔しい。



しばらく問題を解いていた珠紀の口が静かに言う。


「…大体先輩が悪いんですからねっ」


「は??」


あんな所に先輩がいるから…
目が離せなくなるじゃないですか…


「なんで俺が悪いんだよ?」


全然わかってない真弘に腹が立つ。



「なんでもありません!!」



「はぁ?!なに逆ギレしてんだよ


意味わかんねーし…」



「なんでもありませんてば…」

自分でも言ってることにバカだと思う。



「先輩…もう先に帰って下さい。」


真弘は驚いてすぐに真面目な顔になって「……帰んねぇよ」

と小さい言う。



「でもいつ終わるかわからないし…」


絶望的な課題の量を見て言う。
日も落ちかけている。


「バカ。


…だったら尚更だろ。」

夕日の赤がね色に照らされてる真弘の顔がすごくキレイで珠紀は釘付けになった。


大きい目だなとかまつ毛ながいよとか思ってるとその視線に気付いて真弘も珠紀を見つめる。


ドキッ



息が止まりそうで。
何も考えられなくなって。
真弘の瞳に自分が映っていることに、自分だけを見てくれてくれてることに満足していて



私以外その瞳に映さないで



ふっと珠紀が瞳を閉じるとすっと温かい感覚が唇に伝わって鼻に真弘の香りが広がる。
一度離れてからすぐにまた角度を変えて再び触れ合う唇。

その瞬間時間が止まっていた。
木々や風も止まっているかのようだった。




しばらくしてから唇が離れて「ほら、手伝ってやるから早く終わらせろ」と視線をそらし赤くなった頬をした顔で言う真弘がかわいくて愛しくてくすりと笑う。


「…笑ってんじゃねーぞ………こら」


とまた眉をひそめてたが


それが妙に嬉しく思えた






ねえ


どうしてこんなに好きなんだろう

どうして私達は出会って


どうして恋に落ちたのかな


ねぇ先輩


どうして引き寄せられたんだろう

こんなに愛してるんだろう

真弘先輩



大好き










その後課題を解くのに真弘の力を借りても借りなくても一緒だったとか

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