「おい!」



ラギはとうとう痺れを切らしてそそくさと去ろうとするルルの腕を掴んでひき止めた
ギクリと肩をビクつかせて振り返るルルにラギはイライラも限界と言った様子で今にも口から火を吹き出しそうだ

何がそんなにも彼をイラつかせているかと言うと、実際には彼が機嫌の悪い時と言えばお腹の空き具合とこの魔法見習い少女ルル、彼女が関わってくるこの二つに限られる



「ルル お前最近なんかおかしいぜ」


「え、な、何が?」




何がと聞き返す彼女の目は泳いでいて鈍感な自分でさえ彼女が何かを隠していることなどバレバレで


「何がってお前…」



「私、別に、変じゃないし!
あはは!ラギこそ変なんじゃないの!
あ、アルバロが呼んでたからもう行かなきゃ!あはは!じゃ!」




妙な笑い方で早口でしゃべると素早くラギの手を振り払ってパタパタとかけて行った
その勢いに呆気を取られてその姿を呆然と見送った後にイラつきが一気に押し寄せて来た



全くもって意味わかんねぇ
俺が変だと?明らかにお前だろ!
なんで俺に隠す必要があんだよ
大体アルバロだと?
お前があいつに何の用があるってんだ!
ふざけんなよ 

まじで腹立つ!




ズシッ と壁に怒りをぶつけてみてもイライラは解消されず残るのは足の痛みとモヤモヤばかり
ルルの様子が突然変になったのはつい4日前程の事である 何やらアルバロからいらぬ事を聞いたのかなんなのかそれ以来よくアルバロといるのを目にする
それどころかラギがわざわざ気をかけて声を掛けてもそそくさと行ってしまうし休日に誘ってやっても断られる始末で



…………
何をルルに吹き込みやがったアルバロめ

どうせロクな事じゃないに決まってる
前々から怪しいと思ってたんだ
ルルに何かしてみろ
まじ燃やしてやろうかあいつ!

くそ!


ズシズシと自室のベッドの上で胡座をかいて枕に拳を何度も埋め埃が舞い遊ぶかのように空気中を飛ぶ
その埃を手で避けながら机に向かっていた同室であるピラールは訝しげに振り返って微小した




「どうしまシタ ラギ?またドラゴンに変身をしてしまったのデスカ?」



「ちげーよ!大体もうそこらの女に抱きつかれても変身しねーし」



「あぁ、そうでしタネ 質問の仕方を間違えマシタ
 ルルに抱きつかれて変身してしまいマシタカ?」




「は、はぁ!?」



「ラギは抱きつかれてドキドキすると変身してしまいマスネ だからルルに限ったことデスね」



「な、お、おま、何言ってん、だ、全然意味わかんねーし!大体だから変身してねー!!」



何か含んだ笑いをラギに向けるピラールは確信を抱いているようでそれがムカついて羞恥心を煽って悔しい

そうだ
俺はあいつの事になるとやけにイラつきが増したり嬉しくなる 腹が減った時のイラつきなんか比じゃねぇくらいにムカムカしてじっちゃとばっちゃの鹿の干し肉を食った時よりも幸せを感じるのも事実だ(俺の幸せの最高潮なんて今までではそんなもんしか考えられねぇけど)

あいつを俺の故郷に連れて一緒に帰るって約束だってしてるし近いうちじっちゃとばっちゃにも会わせたいと思ってるのに


ドラゴンに変身しちまう問題だって解決…

解決…

し、た


はず、だった
確かに
確かに女に抱きつかれて変身してしまう件に関しては治癒した
かに見えたが
それは更なる問題を引き起こしたと言っても過言でない
何せそれは好きな女に関しては全くと言っていい程いや、支離滅裂すれば何とか…とにかく胸のドキドキによって変身する事が最近解ってきた

つまりはだ
つまりは…
俺があいつに触れたり何かしたりしてドキドキが最高潮になったりすると抱きつく抱きつかないに関係なく変身してしまう訳だ

なんつーか

キツイだろ
正直かなりキツイだろ
俺バレバレな訳だ
例えば少しでも変なこと考えただけで(別に考えてる訳じゃねぇぞ!)それだけで変身しちまう訳で
精神統一するために日々訓練するもそんなもん人がどうこう出来る問題じゃねぇし!



と、とにかくだ
最近のあいつはおかしい





絶対におかしい!




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