□愛情の裏返し
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濡縁で寝転がり、刻を有意義且つ怠惰に過ごすケモノが一匹転がっている。


将臣は柱に背中を凭れさせて苦笑の混じった表情を浮かべ。


「おーい知盛! いつまでも寝てないで身体動かせって。」


「……有川か。いや、“兄上”とお呼びした方がいいか…?」


銀髪の男は焦れったい動きで、声を掛けてきた青髪の素顔を見上げ。


蝶がゆらゆら、ひらひらと舞うようにゆったりとした口調で紡がれた。


「お前の兄上は俺じゃねえだろ。」


「…クッ…つれない、お方だ。」


「いや、つれないとかじゃくてだな……」


会話が成り立たない。


いや、噛み合わないの方が正解だろうか。


「知盛兄上、将臣殿。父上がお呼びですよ。」


静かな空間に、障子越しから重衡の声が自然と耳へ入り込んでくる。


「重衡か、サンキュー。こいつ起こしてから清盛の所に行くから。」


「分かりました。…知盛兄上、あまり将臣殿を困らせてはいけませんよ?」


いつの間にか将臣から視線を背け目を伏せていた知盛の口端が、重衡の不意打ちによって俄かに歪んでいく。


「…重衡…父上に遅くなると、伝えておけ。」


知盛の回りの空気が僅かに冷えたような気がした。


「知盛兄上…もう少し素直になることをお薦めしますよ。私はこれで失礼しますね。」


知盛の口調から何やら察し、口下手な兄を思いつつ何も言わず身を引いて扉を閉めた。


暫くの沈黙。


将臣はじっと知盛の様子を窺う。


「…って!?おい!離、せっ。」


突然、大きな二つの身体が縺れ合い将臣の背中が床についていた。


「冗談はよせ。じゃねえと…容赦しないぜ。」


凄んでも、鼻で嘲笑れた気がした。


我慢の限界。


将臣は知盛の口唇を無理矢理奪い、身に纏っている衣を剥ぎ取っていく。


「っ…ふっ…」


絡み合う舌で、クチュッと濡れた音が耳を刺激して。上昇する熱を抑え切れず、雄を膨張させる。
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