証
□君と夏祭り
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7月を迎え、より一層、夏を感じるようになった。
年に一度の七夕も無事に過ぎ去った、夏の昼下がり。
外は蒸し暑く、室内は冷房が効いて過ごしやすい中、二人はリビングのソファでゆったりと寛いでいた。九郎の膝に弁慶が頭を預けた格好、俗に云う膝枕をしている。
同じ空間で思い思いの事をしながら、互いの存在が邪魔しない雰囲気を九郎は気に入っていた。弁慶もまた同様に。
言葉がなくても心で会話する程、絆は深いと信じられる位置……。
そんな静かな室内に、パタン、と何かを閉じるような微かな音が九郎の耳を刺激する。
「…もう読み終わったのか?」
「ええ、僕ばかりが楽しんでいたら、君がつまらないでしょう?」
今まで読んでいた本を閉じた弁慶はくすっ、と吐息混じりに笑った。
「そういえば今日の夕方に、近くの神社でお祭りがあるそうなんですが行ってみませんか?」
自然で違和感を感じさせない、唐突の質問に九郎は考え込んだ。相手と一緒に何所かに出掛けたいと、丁度思っていたから。
そんなことを考えている内に、己の首は正直に頷いていた。
「九郎、君はやはり犬のようですね。見えない尻尾が見えそうですよ。」
楽しげにくすくすと笑う。九郎は羞恥に顔を背けた。
いつまでも治まらぬ失笑に業を煮やすと、些か拗ねた表情を浮かべる。