証
□掠れゆく真(まこと)
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幼き頃より築かれてきた関係が、呆気なく崩れていく。
ガラスが、脆く儚く割れていくようだ。
「動かないでください。」
「な、弁慶!?」
「彼女には人質になってもらいます。」
突然、仲間だった一人、弁慶が俺たちの、源氏に属する白龍の神子を捕らえ、仲間を裏切った。
愛しい人から紡がれた突然の裏切る言葉の寝返り―…
弁慶は望美の腕を掴んで、見放したような表情を浮かべていた。
見慣れている、穏やかな物ではなく軍師相応の、微笑み。
恋仲の相手に勢いで太刀を向けたものの、悪魔の嘲笑に身が竦む。
沈着な空気が続く中、望美の表情は揺るがない。何所か、未来(さき)を知っているような、自信に満ちた顔。
冷静でいられない己は、何に動揺しているのだろうか。
目の前にいる2人を、九郎は無意識に遠い目をして見つめた。
愛しい人の表情が、つらそうに歪められていることに気付かず。
「弁慶、お前だけは絶対に…っ…」
平家と共に、弁慶と望美の姿が小さくなっていく。
言いたい言葉が、喉の奥で引っ掛かって掠れたような吐息だけが空を漂った。
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