証
□君と夏祭り
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一分一秒がいやに長く感じる。
うつらうつらとし始めたころ、ようやく静かな足音が聞こえた。だが、変な違和感を抱く。
「九郎、待たせしました。」
「ああ、
……弁慶、お前は一体なんという格好を……。」
まどろみの中、彼の声の下がりかけていた頭を持ち上げ。多少の疑問を抱きながら振り返れば、ピキッ、と音がしそうなくらい、九郎は言葉を失って硬直した。
弁慶は相手の思い通りの反応に薄くはにかんだ。
楚々とした女物の浴衣を着こなし、普段から下していた髪を奇麗に纏めてアップにした弁慶の艶姿。
危うい妖艶さで身を包みこみ、視線が逸らせず目が吸い寄せられる程美しかった。
艶然な微笑み。
見惚れてしまう美貌。
「お前と、いう奴は…。」
「さ、行きましょう?」
同じ言葉を繰り返しながら、滅多に見られない姿を脳裏に焼き付ける。
そんな恋人を尻目に、弁慶は玄関へと向かった。