□果実の甘くなる頃
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目を見張るその瞳に、ゆるよると薄い膜が張る。


「ダメだ。」


「くろう…ぁあっ!あ、…きなりっ…動かな、ぃ……は、っぁん…」


穏やかになりかけていた呼吸と身体が、ゆっさと大きく揺れ両足を大きく左右に割られ。


中で放たれていた液体が潤滑剤代わりになって。


淫らに蠢く肉壁と楔が摩擦を起こす。


少し引いては一気に最奥を貫かれ、体位が変わり顔の見えない相手の突き上げを後ろから受け。


「っく……んぁあっ…ひっ、く……もう、ぁ…許しっ…」


なかなか解放させてくれない、意地悪な恋人の行為が苦しくて不意に心から涙と嗚咽が零れ出す。


一番背筋を震わせるしこりを先端で擦られ、感じるままに鳴き許しを乞うてベッドを濡らしてゆく。


「はぁ…弁慶、んっ…泣いて、るのか?」


「っ…泣い、てなんかっ…」


泣き声を聞いた途端、あんなに激しかった律動が止む。


「すまん…泣かしてすまなかった。」


「ど、して…」


どうして、君が悲しげな顔をするんですか―…


「狡い‥、ふぇ…ばかぁ…」


一度体内から熱が引き、向かい合って流れる涙を指で拭う優しい人。


不器用ながら、放出を待つ根元を拘束から解放した。


「…っ…だから!その…お前が、いけないんだぞ?」


泣きたい理由すら、分からない程に…


「弁慶が、あまりに…っ、…綺麗なんだ。」


「…九、郎?」


弁慶も、九郎も頬を赤く染め気恥ずかしいような空気が漂う。


「…本当にすまん。」


「どうして、九郎が謝るんです?」


「弁慶を泣かしたからに、決まってるではないか。」


「それは…君の、愛撫が……気持ち良いから…」


視線を彷徨わせる弁慶が、美しく艶やかで。


「…頼むから、あまり煽らないでくれ。」


「いい。僕で、煽られて…僕を感じて欲しいんです。」


しなやかな腕が、おずおずと九郎の首に回り続きを甘くねだる。


「っ…立てなくても知らんぞ。」


「望むところです。九郎、きて…」


―…君で、沢山僕を満たして。





体を重ねるほど、欲したくなる。


誰よりも、愛しいから。






end.
→あとがき




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