証
□願わくば、本当の音を
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「明日、か…」
夜空には、彼の人と同じくらい眩しい星々が輝いている。
明日を思い描き、口角には自然に不敵な笑みが刻みこまれた。
明日がどうなるか。
戦が終われば、己の身は朽ち果てるまで。
「クッ…精々、俺を楽しませてくれよな。弁慶…」
戦でしか生きていけない。楽しみがなくなる。
「…つまらないことだけは、遠慮願おうか。」
酒の入った猪口に、月明りが反射して神秘さを醸し。
クィッと仰いで飲み干せば、程よい酔いが快感となって身体中を駆け巡る。
柱に身を任せ、そっと深い紫色の瞳(め)を覆い隠し。
思い浮かぶは彼と戦のみ。
「弁慶……」
己を楽しませる男。
「…捨てがたいな。俺の元に、囲ってやろう…」
一生、逃げ出せぬように。
「泣かせるのみ…」
寝所から藍髪の、兄上の声が自身の耳朶を震わせた。