証
□願わくば、本当の音を
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「君とは…戦いたく無かったのに…」
「俺は、戦いたいんだぜ?」
見えてしまった未来。変えられぬ運命は、確かにあった。
知盛は両手に刀を。
弁慶は両手で薙刀を。
それぞれ構え、幾度か刃を交わした。
「もう、僕の心を掻き乱さないで下さい!」
「…ほう?」
敵なのに、惹かれてしまった。
敵同士だからこそ、ひたすら戦うのみ。
相反する存在なのに、心を巣くうは“矛盾した愛憎”。
助けて欲しいと、叫び続ける精神(こころ)。
「来いよ…俺が、可愛がってやるさ。」
一瞬で、キラキラと砕け散った理性。
刃を交えたからこそ、聞けた彼の本音に弁慶の瞳からは透明な雫が溢れた。
「…好、き…です。」
薄く開いた口唇からは、言えなかった台詞(ことば)が零れては空気に混ざって消えた。
そして、
戦は平家が優勢に。
源氏は被害が大きく劣勢へ。
動いていた歴史が、終曲を迎えた―…。
end
→あとがき