証
□君と、つながり。いつまでも。
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「帰ったら、ゆっくりしましょう?ね?」
ふふ、と柔らかな微笑みが羞恥心を掻き立てては、心の中の燻りはさらさらと砂のように崩れていく。
不思議な、暖かさ。
「あぁ。…ほら、何を買うんだ?」
大手のチェーン店のスーパーへ到着すれば、さり気ない仕草で手を離し出入り口に置かれた買い物カゴを九郎が持つ。
温もりが離れたことに、微かな寂しさを残しつつ、順路があるかのように野菜の方から回り。
今夜のおかずや、数日分の食材を遠慮なく粗野な扱いでカゴの中へ放り込んでいく弁慶。
「べんけい、もう少し優しく静かに入れろ。生野菜に傷が付くだろ。」
指摘すれば、左頬がぷっくりと膨れて拗ねている様子を伝えてくる。
「どうせ食べるんだから、一緒じゃないですか。」
荷物を片手に持ち替え、膨れてしまった頬に添え入った空気がぷすっ、と小さな唇から溢れた。
「拗ねるな。終わったなら、会計済ませるぞ。」
さり気ない愛撫で、弁慶の頬は甘く優しい淡い桜色に染まり。
九郎は素知らぬ顔で、スタスタと歩いて会計に向かう。
物が次々と、待ち構えていたもう一つの籠へ移動され。
「特別、割引にしてやりてぇけど。我慢しろよ?」
「将臣か。頑張っているみたいだな。」
顔馴染みの人物に合えば、ニカッと互いに微笑み合う。
表示された金額に合わせ、釣り銭とレシートを受け取ればカゴを持って台へ移動。暇なく袋へ詰めていく九郎。
「九郎、荷物持ちますよ。」
「いい。俺が持つから…手を暖めてくれ。」
スーパーを出ると、寒気が剥き出しの素肌をツンと刺す。
自然と足早になりながらも、おずおずとした様子でひんやりと冷えた手が握りってきて。
寒さに負けない、暖かさ。
*****
「よう、帰ってきたか。」
「兄さん…どうして家の鍵を持っているんですか。」
「家内に借りたんだ。」
明るい家に帰れば、九郎と弁慶は唖然とした。