証
□かける、はやさ
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「気配に聡い二人が、私たちに気づいてないみたいですね。」
「いや、恐らくヒノエは気づいていると思う。」
熊野の烏を扱っているから、という次句は飲み込んだ。
敦盛の賢明な判断は、後に命拾いとなる。
「うむ、そうだな。それもまた、運命だ。」
「だからって、覗きはよくないですよ先輩。リズ先生も俺たちより大人じゃないですか。」
「そっ、そうだぞ!!み、見てはいかん!は、は、破廉恥だ!!」
譲は良心からオロオロするばかり。
九郎に至っては、微かに聞こえてくる友の艶声に顔を赤らめ、気を逸らすかのような様子でそっぽを向いていた。
神子の一対の眼差しは、ひたすら天地朱雀の行為に注がれて。
幼い白龍の目と耳は、ちゃっかりと両手で隠しながらじっと凝視し。ぽつりと零れる呟き。
「デジカメがあればなぁ…」
「望美ちゃん、その、でじ、かめって何かな〜?」
二人が濃密な行為を順当に進め、神子と一部を除く残りの八葉は薄暗く狭い塗籠で、固唾を呑みながら見守っていた。
異世界の道具らしい名前を聞いた途端、景時は興味津々という体たらくで身を乗り出し。
妹の朔にじとりと睨まれる。じわりと嫌な汗が滲み一筋垂らした。
「写真、って言っても分かんねえか。…ようするにだ。料紙に物事を書き留める、天候とか記録するような役割を持つ道具なんだよ。一度記録すれば、墨みたいに色褪せることもねぇんだ。処分しなけりゃ、長く保存できる代物、とでも言えば分かるか?」
将臣はにやりとほくそ笑み、異世界の文明の機器の講義を始めた。
誰かが身じろいだ時、戦では味わわない、身の毛もよだつだろう艶やかな一声が囀られた。
数秒か、数分か。
誰かの、ごくりと唾液を飲み込む音が聞こえ、ハッと望美は半ば放心した意識を取り戻す。
「と、ところで、弁慶さんってツンデレ?ヤンデレ?」
「さぁな。素直じゃねえのは当たってるだろ。」
「つ、んで、れ?やん、で、れ??」
「そうなんだけど、なんていうか…可愛いよね。」
「私も望美と同感よ。弁慶殿は殿方だけれど、女の私から見ても可愛らしいと思うわ。」
「朔ぅ〜。さすが、私の対の神子!」
「望美こそ分かってるじゃない。」
灰色のような薄黒い霊気が、龍神の神子二人の周りから立ち昇るのを、八葉は確かに見た。