音色に乗せて

□水泡
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声が出なくなろうが、
世界から色が消え失せてしまおうが、
何も怖い事なんか無い―――。



『水泡』



朝も、昼も、夜も。
中だろうと、外だろうと…聞こえてくる音。
駆け寄ってくる足音。
流れるような情熱的なメロディー。
高く、低く、心に残るような涼やかな声。
全ての音が、何もかもなくしてしまった俺の世界を
作り直すかのように、この胸に響いてくる。

失くしてしまった声を、
愛を囁くその声を、
もう一度、取り戻したいと

…心が叫ぶ。

お前さんがいれば、何もいらないなんて言ったら…どうするんだろうな。
驚いて目を見開いて、それから…笑うんだろうか。
それとも、苦しそうに涙を浮かべて…顔を背けるんだろうか。

海でしか生きられない人魚姫は、愛しい王子の為にその声を失ったけれど、
音楽の中でしか生きられない俺は、お前さんの為にこの声を取り戻そうとしている。

―――声がなくても、側にいたい。

その気持ちは分かるけれど、それでも…愛を囁く為の声が―――欲しい。
必ず戻ってくるから。
お前さんの元に、必ず戻ってくるから。
……だから、お前さんは消えたりなんかしないでくれるな―――?



終。

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