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※土→(←)近、ピンチでも仲の良い二人。全2ページ



「困ったことになりやがった…」


雨脚がさらに強まり、土砂降りだ。この前過ぎ去った台風が戻って来たみたいだった。
大量の鉛玉が地上を蜂の巣にするよう降り注ぎ、水の弾丸に打たれた草木が悲鳴合唱を歌うだけで、辺りには鳥の声一つ響かない。

「イテテ…久々に膝小僧なんて擦り剥いちまった。トシは大丈夫か?デカイ怪我してない?」
「ああ、擦り傷が少しだけだ」

痛む右頬を手の甲で拭う。微かな血が付いただけだったので「全然大したことねぇよ」と言い添えた。
隊服にこびり付いた泥を払い、ポケットを探る。取り出した携帯電話の画面は開閉してもボタンを押しても真っ黒だ。すぐ乱暴にしまい込んだ。

「ダメだな。やっぱオシャカになっちまった」
「オレのは落ちる途中でどっか行っちゃったっぽい…まあこの山中でアンテナ立つか微妙だけど」
「どうすんだよ近藤さん…」
「なに、そのうち助けが来るさ!雨宿りしながら気長に待ってれば大丈夫大丈夫」

穴の空いたスラックスでしゃがみ、近藤さんは大きな掌で手近の岩肌をパチパチ叩き出した。
手持ち無沙汰を感じさせるその余裕にムカついたオレは「軽快なリズム刻んでる場合かァァァ!!」と途方に暮れるのを中断し、預けていた背を岩壁から離した。

「こうなったのはアンタが無茶したからだろ!無鉄砲なのもいい加減にしろよ、局長なんだ我が身と後先を考えて行動しろ!勝手してっと幼なじみや戦友でも愛想尽かすかもしれねぇぞ!」
「尽かすのか?!嫌だ嫌だ!!そんな殺生なこと言わないでくれ!!」
「……かもしれねぇって言ったろ…」



任務は将軍への謁見のため山道を使用する地方大名の護衛、そして大名を狙って現れるらしい攘夷浪士の逮捕だった。

御用改めと攻めるオレたちの姿を見て散り散りに逃げ出した浪士共だったが、そいつらの中心人物を、止せばいいのに近藤さんが追いかけたのだ。
案の定そいつは鼬の最後っ屁よろしく、振り向きざま近藤さんに発砲し、近藤さんはすんでの所で避けたものの盛大に体勢を崩した。

結果、雨でぬかるんだ足場の悪い細道から急斜面を転げ落ちていき、慌てて後を追ったオレも同様の目に遭うはめに。
全身落ち葉・泥塗れになって転落した先がこの洞穴のある獣道だったこと、些細な傷で済んだことが不幸中の幸いだったが…。





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