おかわり
□アイス
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目の前の子供は今にも泣きそうだった。
楽斗が歩み寄ると、剛がそれに気付き顔を上げた。
泣きそうだった顔が、恥ずかしそうな笑顔に変わった。
それを見て、胸が何故な苦しく、熱くなった。
暑さのせいだろうか。
「また転けちゃったね」
自分でも驚く程の優しい声。
楽斗はその子と視線を合わせ屈んだ。
その子の足元には、溶けたアイスが落ちていた。
「アイス、美味しかって…、お兄ちゃんに、あげよって…」
笑顔だった顔が、アイスを見ると途端に泣きそうになってしまう。
自分の食べていたアイスを、美味しかったからと言って急いで持ってきてくれたのか。
溶けない様に
急いで急いで。
目の前の泣きそうな子供に、愛しさが溢れ。
楽斗は急いだせいで、汗の滲む小さな額に指を伸ばした。
そして優しく、優しく笑うと
アイスの甘さが残っているであろう唇に、そっとキスを落とした。
「…うん、美味しい…、ありがとうね剛君」
言ってやると、剛は本当に嬉しそうに笑った。
可愛いこの子が甘い甘い物を持ってきてくれるなら、
暑い暑い夏もいいと思った。
END