四番隊隊長室
「ご苦労様でした。伊勢副会長」
卯ノ花がたおやかに出迎えた。穏やかな雰囲気だが、妙な迫力がある。
七緒は緊張した面持ちで一礼する。

「粗茶ですが」

控えていた勇音が、暖かい緑茶を運んで来る。彼女にも一礼して、本題に入るべく居住いを正す。

「理事長の助言助かりました。万事上々です」

メガネを押し上げ、ニヤリと答える。

「割合は?」
「5、5です」
「そうですか」

控えていた勇音は二人の会話を聞きながら、十分隊夫婦が気の毒で仕方なかった。
乱菊は豪快に半額を請求したつもりだろうが、卯ノ花は4、6の割り合いでも大丈夫採算が取れます…と言い指示していたのを知っていたからだ。掌で万事を操っているのは、会長でも副会長でも乱菊でもなく、間違いなく理事長の卯ノ花だ。
肝が冷えるのを感じながら、この人には逆らわぬまい。
勇音は固く誓う。

「勇音。映像を」
「はい」

スイッチを入れると、巨大なスクリーンに会長のやちるが写し出される。
見慣れない場所だ。護廷の隊舎ではないようだ。
やちるは、20畳はありそうな広い部屋を斑目にでも作ってもらったのだろう、車輪付きのおかしな乗り物に片足を乗せて、縦横無尽に駆け回っている。
傍らでネムがボンヤリと視線だけを動かして控えていた。
「…ここは?」
「日番谷邸です」
「は?」
ふふと、穏やかに笑う己の隊長を勇音は恐々とした顔で見つめる。
「それでは」
「ええ。貴女も松本副隊長も会長の霊圧に気付かなかったのなら、技術開発局に依頼した霊圧遮断壁は成功したと言ってもよいでしょう」

『ひっつんの家に秘密基地を作ろ〜』

壮大?な計画は、やちるの無邪気な一言から始まったのだが。

写真集をリアルに撮るためだけにそこまでするとは、誰も思わなかったのだが。
卯ノ花だけは別で、天女の微笑みでGOサインを出したのだ。

そこまでして採算は取れるのか?
一人心を痛める勇音の心配を余所に、写真集
ライオンハート

は、売り切れ必死。
増刷間に合わずの売れ行きで、護廷どころか尸魂界をも席巻した。
乱菊の願いは打ち砕かれ、日番谷の怒号が響いたのだか、それはまた、別のお話し。

写真集、ライオンハートと、日番谷邸の秘密基地はこうして誕生した。

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