「あっははは!」
日番谷家のリビングに華やかな笑い声が響く。
己の膝の上で、笑い転げる妻を日番谷は慌てて抑える。
「っおい。暴れんな。茶が零れる」
「だって!皆センスなさすぎ」
乱菊の頭に顎を乗せ、上から覗き込む。
「菊水〜」
「酒の名か」
「菊左衛門」
「母の勘では女だ」
「瑠希哉」
「自分と朽木の名をちゃっかり入れてんな」
「夜美」
「こんな所まで四楓院オタクだな」
「乱兵」
「お前ぇの子か」
「雛菊」
「まだ言うか」
「冬十郎」
「……ウザいな」
ちなみに。上から
京楽春水
射場鉄左衛門
朽木白哉
砕蜂
檜左木修兵
雛森桃
浮竹十四郎
である。
広めた犯人は知れているが、偶然を装ったり、勝手に置いて行ったり、十番隊の席官に託したり。経路はまちまちだが、手元に集まっただけでもかなりの枚数だ。
明日はもっと増えるかもしれない。
日番谷は盛大に溜め息を付くと、乱菊からそれぞれが考えた、有り得ない命名案を取り上げた。
グシャリと丸めると、テーブルの下のゴミ箱に放り込んだ。
「あぁっ!面白いのに〜」
「面白くねぇ」
また一頻り笑った後、日番谷の着物の懐から紙を抜き取る。
「!おいっ。返せ」
雛森にも覗かれた名前リストをバサリと開くと、細い指をするすると動かして、止める。
「これが良い。冬獅郎さんの瞳の翆と、月色の髪を謳った名前」
「……」
色々な候補の名前の一番下に、申し訳程度に書かれていた名前。
「すいげつ…男の子の響きだよ。母の勘では女の子なんだろ?」
からかいを含んで、乱菊の瞳を覗く。
「……みづき」
「は?」
「みどりのつきで、みづき!と読ませる」
「強引じゃねぇか」
日番谷の呆れた声を聞きもせず、閃きに子供の様に瞳を輝かせて。大きく育った腹を摩る。
「翆月ちゃーん。パパもママも愉快な仲間達も貴女と会えるのを楽しみにしてるわ。早く出といで」
「……そうだな。とりあえず出てもらわねぇと。」
乱菊の指に指を絡ませて。
どうか無事に
願う様に撫でた。