死にたくはない
□ふた
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世界中がひねもす赤い
空も まつげも 肺胞も
あの子も
僕も赤い
そうだ思い出した事がある
僕は かねがね自宅を上着の右ポケットに入れて持ち歩いているんだった
それはひとえに便利だからであるが
このままでは僕の家まで赤くなってしまう
自宅が赤いなんてとんだ笑い種だ 恥ずかしくて生きていけない!
僕は錯誤しキチガイの如く後ずさりしながら地に伏せた
それから親指のささくれを深く(上皮細胞が悲鳴をあげるほどに)引き千切ろうとして
やめた。
何故なら僕の上着のポケットには
頑丈な鉄のふたが付いていたからだ
ああよかったもう安心だ
商店街で肺静脈を買って帰ろう
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