小説
□雨 空
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春
3年になった今年、ついに柚樹たちの時代が本格的に始動する陵桜高校サッカー部。昨年は惜しくも県大会ベスト4という結果におわった。今年の目標はズバリ「全国大会出場」である。今日の練習はその第一歩である。
柚樹「…って雨かぁーい!!」
外は凄い勢いで雨がふっている。
ダイゴ「さすがに今日グランドはつかえないな。」
柚樹「ダイゴ!まさか休みわけないだろ?」
ダイゴ「当たり前。ちょっ、監督に外回りの許可もらいにいくわ。」
この時はまだ前の監督がやめサッカーのサの字も知らない人が監督だ。
だから練習メニューとかはすべてダイゴがしきっていた。
京介「マジで走んのぉ?!」
柚樹「おい京介!んなことじゃ目標達成出来ないし、後輩がついてこないぞ!」
京介「かぁ〜めんどくせぇ。」
雨が降りしきる中、外回りが始まった。衣服が雨の水を吸い重くなる。
外周を二周するこのメニュー。部員の平均タイムは26分だ。
柚樹は24分。ダイゴも24分。京介にいたっては23分だった。
走りが終わり皆が次々と帰っていく。
柚樹「京介ぇ〜。自主練すっぞ!」
京介「またヘディングか?今日はグランド使用禁止だぞ。」
さすがに柚樹はあきらめて帰ることに。
この雨のおかげで二人は出会うことになる。
こなた「うわぁ寝ちゃってた。」
こなたは図書室で懸賞のハガキを作成中に寝てしまって気付けばあまり生徒の姿が見えないくらいの時間帯だった。
こなた「は、はやく帰らないと!」
アニメを見るために急ぐが玄関を出ると凄まじい雨。
こなた「あちゃぁ〜。」
傘は持ってきてない。こうゆうとき男は多少気にせず行けるだろうがさすがにこなたも女の子。雨の中傘なしで出歩くのはちょっと。と思っていた。
柚樹「まだやまねぇな雨。」
京介「こりゃ明日グランドフニャフニャかな。」
柚樹と京介が傘をさしながら玄関の前を通る。
京介「あ、ごめん。ちょっトイレ。」
京介は用をたしに玄関から学校内に。
柚樹はあきかに困ってるこなたを見付ける。
柚樹「…ほら。これやるよ。」
柚樹はこなたに傘をさしだした。
この時柚樹はこなたの事を良く知らない。
とりあえずわかっていることは同じクラスということだけ。
けど特別な感情が少しわいた。
こなたも柚樹のことを良く知らない。
こなたは急いでいたため礼をいってすぐにいってしまった。
京介が戻ってきた。
京介「あれ?ゆず、傘は?」
柚樹「壊れたから捨てた。だからよろしく。」
京介「しゃあねぇな。」
男二人の相合い傘。…見苦しいがやってる本人はあまりきにならないところがまた不思議だ。
京介「さっき玄関にいた奴、似てたな。」
柚樹「まぁな。」
そして次の日〜
新しいクラスになって初めての授業が今日から行われる。昨日は全校集会やらなんやかんやでいろいろあった。一時間目は担任のながしみたいな授業からだった
〜朝〜
黒井「じゃあ自己紹介するでぇ。」
三年にもなって自己紹介をしはじめた。
クラスには確かに名前も顔も知らないやつがいたが明らかに必要なかった。しかし全員教壇にあがってやるはめに。
出席番号順でやった。
男子が若い番号から順に与えられていて、女子はその後からカウントされていたので女子の中で一番若い番号でも23番だった。
一番から順に自己紹介されていき男子の最後は柚樹。
柚樹「幸村柚樹です。え〜サッカー部です。趣味はぁ〜…」
まぁ淡々とした自己紹介した。柚樹の次はこなただった。
こなた「泉こなたです。趣味はぁ〜…………。」
特別おかしな自己紹介というわけでもなく無難におわった。席も出席番号順になぞってあり、柚樹の後ろにこなたという状況。
こなたが席に戻ろうとした時に柚樹と目が合う。
ドキッとした。
今までに感じたことのない感覚。
こなたはそう感じていた。
一方柚樹は「あ〜昨日の。」程度にしか思っていなかった。
だから目をすぐに壇上で自己紹介してる人に移した。
トントンッ
こなたが席につき、後ろから柚樹の肩をたたく。
柚樹「ん?」
こなた「ききき昨日は、…か傘…ありがとう。今日返そうと思ったけど忘れちゃって…」
いつもの余裕がなく頬を赤らめているこなた。
柚樹「あ〜あれあげたと思ってるからいいよ。返さなくて。」
なんかさらっと優しい発言がこなたには嬉しかった。…が、この発言の意味はこなたの考えていたものとはまったく違う事に気付くはずがなかった。
こなた「サッカーやってるんだよね?ポジションとかはどこなの?」
柚樹「ん〜と左のオフェンシブだよ。ほかにもいろいろ出来るけど主にね。」
実は柚樹は右利きだが左もなかなかパス精度が高いので中学時代に抜擢されてから左オフェンシブが定着されていた。ちなみに「左オフェンシブ」は左サイドハーフだ。
こなた「?」
普段スポーツ中継をみないこなたはさっぱりだった。
柚樹「んとねぇ〜………」
こなたに説明する。
とりあえずわかったみたい。
こなた「そっか。…えぇ〜と…なんて呼べばいい?」
柚樹「なんでもいいよ。」
なんでもいい。
いっっっ……ちばん困る返答だ。
ほぼ初対面と変わらないのに名前で呼ぶのもなぁと思いつつ
こなた「じゃあ幸村君で。」
柚樹「俺はなんて呼べばいい?」
ほぼ初対面なのに名前でよばせるのはおかしいなぁと思いつつ
こなた「なんでもいいよ!」
いっっ……ちばん困る返答だぁ!!
柚樹「…じゃあ泉で。」
…まぁ無難な返答。
その後ほかの人の自己紹介をききながら、こなたと柚樹は会話した。そこでこなたは一番しっておきたい事を柚樹にきいた。
こなた「幸村君って彼女いるの?」
この事を聞いても別にへんじゃない流れをつくっていたので自然と聞けた。
柚樹「…いないよ。」
口元は笑っていたが目が悲しそうだった。
しかしこなたはそんなところを見てるはずもなく心の中でガッツポーズ。