小説

□溶 氷
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ブォォォォ!!


吹き抜ける風の音。
風は冷たく悲しい風。



トクンッ

胸が振るえた。

柚樹「もう嫌だ嫌だ嫌だ!」


柚樹の視界に女がはいった。

ドクンッ

胸の高鳴りが痛みえと変わりはじめた。

柚樹「もう女は信じない!」


この時も出てきたのはこなただった


こなたはじょじょに柚樹に近付いてくる。

ドクンッ!
ドクンッ!!

胸がどんどん痛くなる。


柚樹「あぁぁああ!」

ドクンッ!
ドクン!!




手足が氷つき、その氷はどんどん浸食していきやがて柚樹の全身を氷つけた。





そこからがいつもの悪夢と違った。





柚樹「…あったかい?」



自分の手に温もりを感じた。
その温もりは体の氷を溶かしていき出てきたこなたもいつもと表情が変わっており、あの憎たらしい笑顔になっていた。



パチッと目が覚めた。


天井

ベット

わずかな明かりと深く暗い部屋

途中から途切れている記憶

病院のにおい


それらから推測したら答えがでた。
自分は脳震盪(のうしんとう)かなにかで記憶が少し欠けていてここにいるのだと。


手に何か感触するので
横を見るとこなたがいた。


椅子に座り自分の手を握りしめたまま寝ていて、その頬は涙のあとがあったのをわずかな明かりですらわかった。


〜柚樹が倒れたあと〜

こなた「ゆず!」

財前「完全に入ったな。」

その後柚樹は立てなかったので救急車を呼ぶことに

救急車が到着して財前も一緒にのりこんだ。

こなた「私も一緒にいきたいんですけどだめですか?」


財前「……のれ!」


一瞬躊躇したがこなたの心配そうな顔を見ると断ることはできなかった
病院について柚樹の診断がされた。


軽い脳震盪と診断された。

財前「幸村は別に大丈夫だそうだ。帰るぞ。」


こなた「わたし、ゆずのそばにいてもいいですか?」

少し財前は困った。
柚樹はすぐに目が覚めそうもないしこなたは目が覚めるまで一緒にいそうだし。
泊まり込みになれば寝るところは待合室しか準備できないっていうし。


財前「じゃあ俺は帰るからな。ちゃんと親に連絡いれて気を付けてかえれよ。」

そしてこなたは椅子を借りて柚樹の様子を見ていた。途中から寝ちゃってたけど。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「私は…ゆずが好き」




こなたが自分を好きだといったのに





それを受けとめようともせず





過去にとらわれて




「女は信じない」という壁をつくり



拒否しつづけた




「触るな」




なんて酷いことをいってしまったんだろう





そんなことを言ってもまだ



こうして自分のことを心配してくれてる



そんな人を拒否していた
自分が情けなかった。





柚樹「バカだ俺。バカすぎる…」

柚樹は握られてる左手を離さず空いている右手で顔を隠した
涙が止まらなかった



京介の言葉が脳裏によぎる



「傷付かない恋愛なんてないんだぞ」




〜朝

すずめがさえずっていて清々しい朝。

日差しがこなたを起こした。


こなた「あれ!?何でベットの上に?!」


驚くのも無理はない
椅子で寝ていたはずがベットの上で寝ていた。

こなたより先に柚樹は起きていて病室の窓の前に立っていた。


柚樹「おはよ♪」


いつもの子供みたいな笑顔で挨拶をしてきた。


照れながらこなたも返す。


柚樹「まだあの時の返事してなかったな。」

こなた「えっ?!」

柚樹はこなたが起きてからすぐに言いたい事をいった


柚樹「俺の一番もこなただよ。」

あまりの驚きにこなたは口に手をあて言葉を返せなかった

少し申し訳なさそうに柚樹は続けた

柚樹「俺と付き合ってくれないか?」


あんなこといったんだから本来謝らないといけない

でもその前に言いたいんだ

その勇気をくれたのはこなただから


窓の隙間から風がはいってきた。



ビックリしたような。


うれしいような気持ち。



こなた「……うん♪」



少し固まったあとすぐに頭を整理したからできた返事だ


柚樹「触るななんていってごめん」

柚樹は深く頭を下げた


こなた「やめてよ恥ずかしいなぁ。頭あげて」

柚樹を気づかうこなた

柚樹「俺…弱くてごめんな。昔のことひきずってて。」

こなたの目を見ることができなかった。



こなた「これからのことだけを考えてくれればいいよ!」


柚樹の心に光がさしこむ。


その光は堅く閉ざされた氷を

「妹」というひびから差し込み


とかしていった。



真っ黒な心を白く染めて




二人の新たな第一歩となった。

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