小説

□継 承
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妻「夫の病気はもう末期でした。動ける体じゃないのに後生だといって…
本当は夏の時点で駄目だったはずなのに奇跡的に回復したんですが結局はこうなってしまいました」


こうなった?


死んだってか


めちゃくちゃ元気だったじゃねぇか


京介が財前の妻の足元にいる小さな子供がいるのに気付いた


子供「お父さんいつ起きるの?なんで寝てるの?」



財前の息子か?


小さい


一番かわいい時期じゃねぇか


父の死もわからない年頃の子供がいて、自分の妻もいて、それでも後生だと言って選んだのは俺たち


京介「俺はこんな人を鬼といっていたのか」


財前の妻は子供をなきながら抱きしめて
もうすぐ起きるからといい聞かせていた
大粒の涙を落としながら



京介「バカじゃねぇの」


どう考えても普通家族をとるだろ


お前俺たちが夜遅くまで自主練習してんの最後まで見てたよな


そんな状態なら早く帰ってやれよ


京介もみんなのと同様に泣いた



大会までもう少ししか時間がない

監督がいなくなった陵桜はチームが一丸になっていった


何を話し合うわけでもなく財前監督がすべてを捨てて自分達にかけてくれた想いを無駄にしないために



柚樹とこなたは財前が眠る個室から出て近くの椅子に腰かけていた

会話はできるはずもなく柚樹はただ、ぼーっとしていた

そんな柚樹をこなたは心配だった


何かに気付いたかのように立ち上がると柚樹はどこかにいこうとした


こなた「どこいくの?」


柚樹「グランド」


こなた「何するの?」


柚樹「1つしかないだろ」


それ以降は口を開かなかった



こなたはついて行こうとしたが財前の妻に止められた

妻は一度お辞儀をするとこなたに何枚もの手紙を渡した


妻「今度の試合の前にこれを各選手に渡してください。内容は私も読んでません」


こなた「わかりました」



夕方になろうとしていた


こなたはグランドに足を運んでいた

柚樹を見にいった

グランドで駆け回る者たちを見て感動してしまった



チーム全員、あの病室で泣いていた三年生全員が練習していたのだ


柚樹だけじゃない

全員が泣いてる場合でないと


財前の想いに応えるために悲しい心を押し殺して頑張る姿は掛け値なしにかっこよかった


絶対に負けない


心はそう叫んでいた
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