小説

□伝 染
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凄まじい気迫を纏いドリブルで切りこんでくる柚樹を近藤がようやくコーナーキックにして抑えたものだった

今の柚樹を抑えるにはコーナーキックにするのがやっとだった

柚樹「やるぞ」


柚樹がやろうとしていたのは今まで隠していた必殺技だった

柚樹「太陽、まかせた」



太陽「あ、あぁ。」


直接ボールをわたされた

柚樹はヘディングでは戦力にならないためこぼれ玉要員だった


太陽はコーナーキックを蹴った。

近藤「こいつら!」

ヘディングにおいて近藤は絶対の自信があった。故にダイゴについていたがまわりの陵桜の選手とぶつかり完全にマークをはずしてしまった

これも戦術

本当ならファウルをとられるのだが故意ではないような演技力のため笛はならなかった。


フリーのダイゴのところに丁度太陽の蹴ったボールがきた


完璧だった




しかし豪が迷いなく飛び出したおかげでダイゴにドンピシャだったパスをパンチングでふせがれた



ボールはたまたま柚樹のところにフラフラと飛んできた


柚樹は一瞬も迷わず右足をふりぬいた



近藤「豪!!」



豪「くっ!」


豪の手にあたるも力あるシュートはゴールにつきささった


1-2


会場がおおいにわいた


反撃の狼煙はあがった



柚樹「はやくボールだ!!」



メグがボールを手にもちすぐにボールを中央にセットした




負けられない



それは両方にいえた言葉だった

柚樹のFWという奇襲はきいていた

なぜ通用する?

過去に経験していたから?

だとしても陵嵐相手に通用するだろうか

答えは当然だったかもしれない

柚樹は京介をずっと見てきた

そのプレーを見ていてFWの勉強はずっとしてきた


だからできる




勝ってはいるが追われる陵嵐のプレッシャーは半端なものではなかった

残り5分


相手DFにペナルティエリア前で柚樹が倒された


ファウル

会場がおおいにわいた



この位置からなら必殺技かだせる


だがこれには京介が必要だった


柚樹「俺が蹴る」


この戦術は本来なら太陽が壁からボールの位置をずらすようにパスし、柚樹がそれをピタリと止める。広くなったシュートコースに京介が蹴りこむといったものだった

しかし京介はいない

柚樹は決意の目をもっていいだした


ダイゴ「わかった。まかせる。止めるのは俺にやらせてくれ」


そういったやりとりがなされた



しかし太陽は聞いていた。相手選手がひそひそとはなしていることを


相手「おい…あれくるぞ」


笛がなりプレーが再開された



柚樹が助走を走り始めて本気で驚いた



壁が移動し柚樹の前にシュートコースはなくなったのだ


柚樹に迷いが生じた


その迷いを消し去ったのは太陽だった


太陽はダイゴにパスすることなくシュートを放っていた

シュートは壁の上をこえキーパーから逃げる回転がかけられていた



豪から見た視点でいえば

突然何かが視界に飛込んだ


ボールだ



このスポーツはあのボールをゴールという枠にいれるゲームだ

俺の役目は?

キーパー

あのボールを止めるのが仕事だ


一瞬という短い時間にこれだけのことを考えさせられた


それだけありえない事が起きていたのである


豪が飛び付いているころには太陽はゴールに背を向けていた


豪「がぁぁあああ!」


必死にとびついた



観客「わぁぁああああ!!」


ボールはゴールに吸い込まれた


2-2


太陽は観客の声と自分のもとにくる陵桜の選手たちの驚きと喜びの入り混じった表情で得点したのを確認した



こなたとかがみは抱きあって喜んだ

涙がでそうだった

こんなことだれが予想しただろうか

絶望に陥るまでの点差

陵嵐が相手ではその二点という点差は果てしなく遠かった

だれもが諦めかけた


だが男は欠片も諦めなかった

彼の手放さなかった希望がチームにまたたくまに伝染していった


まさに劇的


瀬戸「まだ負けたわけじゃねぇ」


瀬戸はいらついていた。しかし頭の中では冷静をたもっていた


陵桜は限界にちかかった


陵嵐の猛攻を防いではいたがいつ崩されてもおかしくはないほどピンッとはりつめていた糸


そのはりつめている糸が延長戦に入っても保つことができるか





できるはずがない


それほど圧のある攻撃と体力の限界

ギリキリの緊張感


そんな空気の中ダイゴがとった行動は生きるか死ぬかの賭けだった
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