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大学生の夏休み
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大学生になって、最初の夏休みがやってきた。

三年間京都で過ごした夏よりも、東京の夏は少しだけ過ごしやすい気がする。とはいっても暑いもんは暑いから、海とかプールとか行きたいなぁなんてぼんやり考えながら畳の部屋の風通しの一番いい場所でゴロゴロしていた。

〜♪

いつの間にか距離が出来ていたスマホが間抜けな着信音を奏でる。立ち上がるの、めんどくせー。



「…っお、は、も」

《なんだ いやらしいな》



電話越しにでもこの状況を見破っているであろう赤司は、くつくつと愉快そうに笑う。緩く握った手を口元にあてて笑ってんだろうなぁ。つーかいやらしいってなんだ。あんたのがよっぽどやらしいわ。

転がって取りにいくなんて不精をしたら、ゴールを目前に机の脚の角に小指を強打したなんてバカすぎる。え、うそ、赤司のツボに入った?まだ笑ってるよ。後からじわじわくる感じかこれ。



「あかすぅいー?だいじょぶかー?」

《ンンッ。ああ、大丈夫だ》

「ん。なんか用事?」

《来週から新潟に行く》

「へー、いってらー」



赤司がつぼってる間に小指の痛みはだいぶましになった。新潟のお土産ってなんだろう。米?てかわざわざ報告するために電話してきたの?あたしらそんな仲じゃないよね、別に。

はっ!まさか赤司ってあたしに気があ…



《何を他人事みたいに。お前も行くんだよ》

「は?」

《中学の友人と行く予定だったがひとり行けなくなってな》

「それでなんであたしが…」

《昨日さんざん暇だからどこか連れていけとほざいていただろ》

「そりゃそうだけどもっ」

《確認だけど、免許は持っていないな?》

「はあ」

《詳しいことはまた連絡する》



あ、切れた。つっこみたいことめっちゃあるのに切られましたよ。赤司の中学の友達の輪のなかにあたしひとりで乗り込むってこと?なにその自殺行為。

そもそも何泊だよ。何人で行くんだよ。詳細今すぐ連絡しろ。赤司に旅行行くような友達いたんだ。

一番最後のつっこみだけ消去して、メールを送りつけた。


今年の夏は大変なことになりそうな予感しかしない。どうか無事に帰ってこられますように…





(赤司っていい奴だけど、妙な威圧感あるんだよねぇ)
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