秋は一年のうちで一番好きな季節かもしれない。過ごしやすさでいえば春も悪くはないんやけど、夏に近づくより冬をにおわす秋の方がええなぁと思う。
今日はお天道様もご機嫌よろしゅう、雲ひとつない快晴。
インドア派を貫いてきたあたしもそれに誘われるようにして散歩に出掛けた。
「あにきー 車借りんでー」
「んー。気いつけるんやでー」
「はーい」
無事に免許を取ってから二ヶ月になる。ひとりで運転してると思い出すんは夏の免許合宿で、あのとき友達んなったさつきからきた最近のメールも同時に思い出した。
今日は関東にある大学のバスケリーグの決勝戦があって、あの時のメンバー全員が集まるであたしにも誘いが来ていたのである。今の今まですっかり忘れとったわ。堪忍なさつき。
メールもろた日はえらいしんどくて、返す気力も覚えとく気力もあれへんかった。返信したらすぐに『みんな会いたがってるから早く!』…やて。
エンジン回してサイドブレーキおろしてドライブモードにシフトして、ほな行きましょか。
「あっれー!?なまえちゃんだ!どったのー?」
「葉山先輩、何でこないなところにいてるんです?」
「だって今日ここで試合だもん!あ、わかった!赤司の応援だ!そうでしょ!」
「そうといえばそうなんですけど、違うといえば違くて」
「照れなくていいのにー。会場まで連れてったあげるよ!」
「それはほんまに助かります」
駐車場に車を停めたまではよかってんけど、なんや広すぎて体育館がどっちにあるかようわからんくて困ってた。
葉山先輩は高校の先輩で、委員会も一緒で征さんとも仲良くて、そんなよくある関係の人。
体育館ゆうよりアリーナっちゅう方がしっくりくる試合会場に着くと葉山先輩は「やばい!ギリギリだ!じゃあ赤司になまえちゃんが来てることは伝えとくから!」なんて言い残して行ってしまった。
さて、どないしよか。
「え!みょうじっち?」
「あ、黄瀬くん」
「やっぱり!久しぶりっすねぇ!桃っちに来るって聞いてたけどこんなに早く会えるなんて思わなかったっス」
「会えてよかったわぁ。広いしどこ行ったらええのんかわからんくて」
「もう少し早く来てくれたら俺の活躍もみれたのに、残念っスね」
「残念…せやねぇ」
黄瀬くんはあたしの反応に不満そうやったけど、知らん。これから紫原くんと緑間くんの試合があるらしいで観客席に向かった。女の子からの視線がむっちゃ痛い。はや歩きやはや歩き。
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