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□きみをよぶ
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◎ボーダー本部は広すぎる
小型遠征挺でボーダーに帰還してからおよそ1時間が経とうとしていた。
案内を辞退して記憶を頼りに司令室に向かっていたけど、2年留守にしてる間に迷宮となったらしい。
プラットにいた技術者の人もすれ違う人も全然知らなくて、帰ってくる場所を間違えた説が濃厚になってきた。
「なまえ?」
「?」
「やっぱり!帰ってたんだな!」
振り向くと爽やか笑顔の赤い隊服の男の人が軽く手を上げてこっちに向かってくる。
「どちら様でしたっけ?」
「っとお?!」
わたしの肩に置こうとしていたであろう手は空を切り、彼はズコォってなズッコケリアクション。
いや、待てよ?
この無造作なのかセットなのかわからないシルエットは!
「迅!すっごい爽やかになってるからわかんなかったぁ!路線変更で黒髪にしたの??准くんのマネ??」
「なまえ、おれがその准だよ。迅とそんなに髪型が似ていたかな」
「え、……本物の准くん?」
「そう」
眉を下げて困ったように笑う人は、幼い頃からずいぶん面倒をみてもらっている2つ上のおにいさんだった。
「准くん!なんか大人みたいだから全然気付かなかった!ごめんっ!元気だった?」
「ああ、元気だよ。2年ぶりだけどなまえは相変わらずだなぁ」
准くんはわたしの頭をぽふぽふと撫でて、ニッコリ笑った。
あー、この感じ落ち着くなぁ。
城戸さんに報告に行きたくて迷子になっていたことを伝えると、当然のように案内をかってくれた。
偶然会ったのが准くんでよかったー!
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