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□きみをよぶ
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◎2年前は冬島隊にいたんです
「当真くん、冬島さんは?」
「おう、なまえ。冬島さんなら…」
「止まれ!!」
おっとお、先頭を走ってる太刀川さんからストップ入りましたァ!
どうせ冬島さんは船酔いでゲロゲロってとこでしょうからいいんだけど、なんというか、やっぱこうなるよね。
わたしらの進行方向に立ち塞がるのは、迅だ。
「うおっ!迅さんじゃん、なんで?」
「よう当真。冬島さんはどうした?」
「うちの隊長は船酔いでダウンしてるよ」
だよねー!バッチリ予想通り!さすが!
予想が当たって満足なわたしをよそに、太刀川さんと迅は何やら探りあいの会話を交わしてる。ほんと2人ともこういう場では冴えてるよ。輝いてるよ。
「『模擬戦を除く ボーダー隊員同士の戦闘を固く禁ずる』。隊務規定違反で厳罰を受ける覚悟はあるんだろうな?迅」
蒼也さんの脅し?に迅は表情ひとつ変えず、あんたらも同じだと答える。
今回の標的の黒トリの近界民は、既に玉狛で入隊手続きを済ましてるそうだ。
ホンット面倒な展開!怒られてもばっくれちゃえばよかった!
今からでも間に合うだろうか…。
「どーこ行く気だぁ?なまえ」
「うぐ!い、出水…」
目立たないようにムーンウォークで後ずさったのに…!
くそう、当真くんに話しかけようとしないで一番後ろ走ってればよかった!
「逃げようとしても無駄だかんな」
「…出水、なんで手をつなぐのじゃ」
「なまえはすぐ脱走しようとするから、捕獲」
「わたしは幼稚園児か。離せ」
「却下〜」
なんで!こいつはこんなにご機嫌なんだよ!この弾バカが!
「お、新手だな」
「へあ?」
弾バカの視線を追うと、嵐山隊が揃っていた。
准くんは忍田さんの命で迅の助太刀にきたという。
当然、迅はこの状況を予測していたわけである。
でも、太刀川さんが何もせずに退くわけがないのだ。サイドエフェクトがなくたって、これくらい予測できる。
迅はわたしらに撤退を提案するけど、そうならない未来がみえてるのだろう。目が好戦的だ。
「おもしろい。おまえの予知を覆したくなった」
「そう言うだろうなと、思ったよ」
太刀川さんが弧月を抜くと同時に、わたしを除く全員が戦闘体勢に入ってしまった。
全員隊務規定違反!でしょうが!!
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