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□きみをよぶ
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◎成長してるんです
「あれ、なにしてんの?なまえ」
「………………じん。またか」
今夜の『ワクワク☆黒トリ奪取大作戦』は失敗に終わり、遠征の報告補足とお願いをするために城戸さんに会いに来た。
例のごとく扉の前で仁王立ちしていると、急に扉が開いて、さっきまでバトってた迅悠一が出てきたのである。
…こいつ、へこんでるなぁ。長い付き合いだもの、それくらいわかる。
「なんかあった?」
「…あー、なまえはこれから城戸さんに話?」
「ん。まあ」
「終わったら外の自販機まで来てよ」
「わかった。あとでね」
迅はすれ違う時に、なにか呟いたけどよく聞こえなかった。
ほんとに小さな声だったから、聞かせたくないけど零れてしまったみたいな言い方だった。
会議室に入ると、支部長以外の幹部が揃っていた。
どうせ伝わる話だしいっか、と城戸さんの前に立ち、気付いた。
迅の落ち込んでた理由。
「何の用だ?今夜の報告なら太刀川たちから受けた」
「別件です。その前に、どうして『風刃』がここに?」
「迅が、玉狛の近界民の入隊と引き換えに置いていったからだ」
迅が決めたことだから、文句はない。
きっと誰かのためだったり、ボーダーのためだったりするから。
でも、悔やまれるのは仕方ないと思うんだよね。例えわたしがこれをきちんと報告してたとしても、この今は変えられなかっただろうけど。
「遠征中に、黒トリガーを手にしました」
わたしの運命もまた、変えられなかった。
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