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□きみをよぶ
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●烏丸京介
≪前略 小南桐絵さま 烏丸京介さま≫
お元気ですか。わたしは元気です。
先日こちらに帰還してから、遅ればせながら昨日玉狛支部に参上し、おふたりにもご挨拶しようと待機していました。
しかし、本日11時30分頃、城戸組長より即刻本部に来るよう厳命を受けてしまいました。
命の惜しいわたしは、おふたりにあいさつが出来ずにいることを悔やみながら本部へ向かいます。
ごめんね!もういっそ本部まで来てよ!
≪マカロンは頂いた。 なまえより≫
夕方、支部に来るとこんな手紙があった。
裏返すと真っ二つに裂かれたらしく、テープで止められていた。
「なんなのよもう!!マカロンもなければなまえもいないじゃない!!」
「こなみ先輩が会いに行けばいいじゃん」
「いやよ!」
「なんで?」
「なんとなくっ!」
「変な嘘つくな〜」
「おだまり遊真っ」
恐らく手紙を破いた、というか破いてしまったのは、ぷんすかしてる小南先輩だろう。
昨日の夜中に先輩とおれ宛に、なまえ先輩から支部にて待つ、という連絡があった。
小南先輩は正直には言わないものの、幼なじみのなまえ先輩が向こうから戻るまでは元気のない日が多かった。やっと会えると今日も学校が終わってすぐに支部に駆けつけたんだと思う。
「小南先輩となまえ先輩って、仲がいいんですね」
「2人とも旧ボーダーからの付き合いだからな。修は先輩に会えたのか?」
かく言うおれも、単身で近界に乗り込んだなまえ先輩の無事な姿をこの目で確かめておきたかった。
あの人なら大丈夫だろうとは思いつつも、年上のくせに危なっかしくて目が離せない人だから、会って話をしたかった。
「はい、昨日。キレイな人だけど、面白い人ですね」
「そうだな。先輩はあんなだけど頭がいいし、戦術にも長けてるから色々聞いてみたらいい」
「はい!」
修の言う通り、なまえ先輩は見た目と中身がそぐわない。
2年前の先輩はセーラー服が似合うかわいらしい女の子だった。ボーダー隊員募集のポスターでモデルをやった位に。
あれを見た男たちがあの人を探してたけど、普段の奇行や変顔、おれ達からの扱いをみて、誰も気づかないで通りすぎる。
…まあ、そうなるように仕向けてた訳たけど。無駄な敵は増やさないに限る。
「ほら!行くわよ!遊真!」
「ほいほい。今日のこなみ先輩には勝てそうだな」
そうされてることに少しは気づけばいいのに、なまえ先輩は鈍すぎる。…やっぱりすぐにでも会いに行こう。
「修、おれ達も始めるぞ」
「はい!よろしくお願いします」
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