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□きみをよぶ
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◎大規模侵攻@
女子高生生活は、まあ順調である。
「なまえちゃんって、出水くんか米屋とつき合ってるの?」
「まって、1年の烏丸くんかも!」
「烏丸くん?!イケメンじゃん!」
「ね!ボーダーってかっこいい人多いよねー!」
女の子たちがきゃいきゃいしてるのって、なんかいいよねぇ。
カーディガンの袖を引っ張って指先しかみえてない感じとか、おねいさんは大好物です!
「「で?誰とつき合ってるの?」」
女の子のおしゃべりは脱線して、そして急に本線に戻ってくる。
ずいっと向けられたふたり分の視線に、ブロッコリーが箸から滑り落ちた。お弁当箱の上だからセーフだ。
お昼を一緒に食べようと誘ってくれた仲良し(ご本人たち曰くフツー)ふたり組はすでにお昼を平らげて、おやつタイムに入っていた。
口の前まで持ってこられたポッキーの端に反射的に食らいつく。
「ありがと。わたし、誰ともつき合ってないよ」
「そうなのー?」
「じゃあさ、誰が好きなの?」
「好きって、ええ?」
そういう風に考えたことない、と正直に言えば声を揃えて「もったいない!」と嘆かれてしまった。
17歳。半分以上の自分の形成が終わって、他人に興味をもつお年頃。
学校やボーダーのような『組織』にそういう年頃の男女がいれば、何かしらあるのが自然で、もっと周りに目を向けなさい、と彼女たちはのたまう。
なんと答えたらいいか考えながらブロッコリーを噛み砕いていたら、ボーダーから緊急通信が入った。
「緊急招集だ!2人も早く避難して!今の話は、次会うまでに考えとくっ」
ボーダー提携校だけあって、こういうのに慣れているのか2人は「気を付けてね」「宿題ね」と心配と笑顔を混じらせて見送ってくれた。
同じ教室の対角線上にいた出水と米屋がお昼をねじ込むのを待って、学校を飛び出した。
少し前に通達のあった、近界からの結構な規模の侵攻。
つまり、迅がみた未来のわたしがやってくるということだ。
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