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□きみをよぶ
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●出水公平
近日中に近界のどっかの国が攻めてくる、という通達があった。
そのXデーは今週中。早くて3日後だと迅さんが予知したらしい。
おれら正隊員には非番でも必ずトリガーを携帯し、有事の際は近くの隊員と合流して近界民の排除に当たれ。市民を危険に晒すな。という割かしシンプルな指示が出された。
B級もA級も可能な限り隊で動けという指示もあったけど、迅さんの予知を聞く限りだと多分おれは学校にいる。米屋あたりと組んでやることになりそうだ。
そんな予想の答え合わせをするかのように、太刀川さんに声をかけられた。
「あいつの予知でいくと、おれらは非番に当たる」
「まあ、そっすね。珍しく連休だし」
「だから隊では動かない。米屋あたりと組んでやってくれ」
「了解。おれはいいけど、唯我は?」
「あいつは適当に言って本部に置いとく」
「はは。でもそれが無難すね」
「他の隊に任せるわけにはいかないからな」
「同感。じゃ、おれ行きますね。おつかれっした」
「あ、ちょっと待て。迅が話したいことがあるとか言ってた」
「迅さんが、おれに?」
珍しいなと思いつつも、本部を出て指定された市街地のラーメン屋に向かった。
そういや迅さんと2人で本部以外で話すのって初めてだな。
あの人と話すときは大抵、なまえが側にいる。それを思うと何だか急に足が重くなって、そもそも話ってなんだよって所にたどり着く。
道のまん中で立ち尽くすおれを、行き交う人々がするすると上手にすり抜けていく。ちらりと視線を落としていく人、目もくれない人、凝視する人、指差してくるカップル。カップルの会話や動作ばっかり意識に入り込んで来やがる。
迅さんが改まっておれに話なんて十中八九、なまえのことだろーよ。
「出水、なにぼんやりしてんだ?迷子?」
「……迅さん。ほんと人の真横とりますよね」
いつの間にか隣に立っていた迅さんは、つなぎにダウンジャケットを着込んでいた。
工事現場バイトの兄ちゃんかよ、と思ったのは口に出さないでおく。
いつだったか三輪が、迅さんと太刀川さんは似てるとぼやいていたけど、おれはあんまり思わない。戦闘となれば合致することは多いけど、こうしてプライベートで向き合うと、ちゃらんぽらんな感じはうちの隊長殿が上だ。
「とりあえずラーメン食おう」
「すね。寒すぎます」
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