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□きみをよぶ
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基地の外に出るとすっかり暗くなっていて、空気がキンと冷えて少し痛い。
だけどあいにくわたしの防寒具は、長めでベージュのダッフルコートだけだ。
隣を歩く出水は濃紺のダッフルに、ストライプのマフラーをしている。
つーか陽介たちとバイバイしてから出水のやつ、ろくにしゃべんないんですけど!!
何なんですかっ!!
黙ってると、風間隊(主に歌丸)に言われたこと考えちゃうんですけど!!
あの人らは色々勘繰ってたけど、クリスマスイブに焼肉行く奴らがどうこうってのもおかしな話だよねぇ。
熟年カップルかってね。はは。
「ね、出水」
「何」
「今日がクリスマスイブって知ってた?」
うわあ、なんだいそのかおは。
ごみ虫でも見るような目ですけど?わたしそんなに変なこと聞いた?
うわあ、続いてなっがいため息ですよ。
「おまえさぁ、それ本気?」
「は?本気って?」
本気も冗談もないと思うんですけど!
もうすぐ市街地に着く、というところで出水は足を止めた。
わたしもなんとなくそれに従う。
「どしたのさ。さっきから変だよ?何かあった?」
何も答えない出水が一歩距離を詰めてくる。
そうなると必然的に見上げるかたちになる。
背も伸びたけど、頬に向かって伸ばされた手も、わたしの視界を埋める身体もひとまわり大きくなった気がする。
「あふっ!?」
「緑川ってか、男に抱きつくのはやめろ」
ちょっとまて!なんでそれでわたしが顔を両側から圧縮されにゃならんのさ!
絶対おもろい顔んなってるって!見えないけど!!
「じちょーしましゅ」
「よし」
出水は偉そうに笑って、それから自分のマフラーをわたしにぐるぐる巻いた。
手をひかれて街に出るととってもいいにおいがした。
ぐきゅるるるるるる…
「腹の音でかすぎだろ!色気ねーな!」
「運動したら余計腹へった!はよ肉!!」
「へいへい」
出水は何がよかったのかすっかりご機嫌になって、前からよく行ってた焼肉店に連れていってくれた。
クリスマス効果なのか、お店は空いててお肉がどんどん来て幸せです!
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