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 図書館に行った帰り、無性にシュークリームが食べたくなってショッピングモールに寄った。

 祝日なだけあって、色々イベントをやってるみたいで、人が…。



 早速来たことを後悔して、くるりと踵を返した。

 ら。



 ドンッー





「う、うっ、う、ぅうああああぁん!!」





 え、ええええ…。

 足に何かぶつかったと思ったら、子供が…。
 目が合った瞬間に泣かれるって…。

 目の色かな…。さすがに子供に泣かれるのはキツイ…。




 どうにか泣き止ませたくてポケットを探ったら、入口で配ってたキャンディを見つけた。




 手のひらにそれをのせて、男の子の目線に合わせるためにしゃがんだ。







「ね、みて。ここ、何もないでしょ?」

「う…?ぅん…」

「手をね、ぎゅってして、お願いするの。甘いものをくださいって

 …ほら、キャンディだよー」



「…………」





 
 ち、沈黙…。

 ちょっと大根役者すぎた…?







「…おねえちゃん、まじしゃんさんなの…?」

「え?あ、うーん、修行中なの。わかる?」

「わかる!おねえちゃん すごいねっ!」

「ありがとう…」





 ひとまず笑ってくれてよかった…。 マジックの練習、しようかな…。




「はとさんもだせるの??」

「鳩さんは…むずかしいからまだ、できない、かな」





 言われてみれば、あれってどうやってるのかな…。




 それにしても、この子、かわいいなぁ。

 …じゃなくて。迷子だよね、たぶん。





「おねえちゃんね、みょうじなまえ っていうの。きみは?」




 あ、やば。こんなに目、見たら泣いちゃうかな…。




「しょうちゃんは、しょうへい です」




 
 かっ…かわいい…。
 いやいや。そうじゃなくて。




「ショウヘイくん、かっこいいお名前だね」

「なまえおねえちゃんは、かわいいね」




 にっこり笑ってショウヘイくんは言う。



 …イケメンは小さい頃からイケメンなんだね…。





「ショウヘイくんは今日、お父さんとお母さんと来たの?」

「んーん。おにいちゃんと、ようへいときたの」

「ようへい?」

「ようへいはしょうちゃんと フタゴなの」





 なるほど。この顔と瓜二つなら、将来楽しみだね…。

 じゃ、なくて。

 あたしさっきから余計なこと考えすぎ。





「お兄ちゃんのお名前は、わかるかな」

「うん!きょうすけおにいちゃん」

「おっ、えらいね。そーしたらおねえちゃんが、キョウスケおにいちゃんとヨウヘイくんを見つけてあげる」





 ほんとにーっ!と目を輝かせるショウヘイくんは、天使なのかな?


 …はぁ、あたし、キレイな顔に弱いんだなぁ。

 綾辻にも、弱いし…。






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