ぶ り ー ち

□開始合図の口付け
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「やぁ… よく来たね」







虚圏内に現世のメスが紛れ込んだという知らせがきた。
藍染様が言うには、そのメスは黒崎一護にも井上織姫にも全く関係のない現世の住人らしい。

だから、藍染様からの「排除しなさい」という命は即決だった。


けれど、虚圏内のあらゆる生物を研究し尽くしてしまった僕には現世の住人がどういった造りをしているのか少し興味があった。
調べれば、僕の研究は今以上に展開されるんじゃないか。

その旨を藍染様に直接伝えたら、意外にも僕の意見は尊重された。








「此処は僕の研究室だ。そして僕はザエルアポロ・グランツ。
…君の名前は?」

「…」

「おや?僕の言葉が理解出来ないのかい?」


その、生意気ともとれる表情が僕には気に入らなくて乱暴に下顎を持ち上げて僕の方を向かせてやると、その目の前のメスはさらに鋭く此方を見た。



「…あんたに名乗るつもりなんてないわ」

「フン…。何て可愛げのないメスなんだい?君は、」

「……あんた。こんな話をしにあたしを呼んだんじゃないでしょ…。
殺すならさっさと殺せばいいじゃない!」

「――!」



面白い…
睨み付けたと思えば、その次は泣くのか?


なんて弱いんだろうか このメスは…


掴んだ下顎を更に力を込めて引き寄せると、追い討ちをかけるように僕はそのメスを冷たく見下ろした。



「…確かに、君の読みは間違いじゃない。僕は君を殺すつもりでいる」

「っ」

「けれど… 勘違いするなよ?
お前を呼んだのは単に殺す為じゃない」

「…な に、」

「誇りに思ってくれよ?
僕の研究材料にしてやると言ってるんだよ…!!」




その皮膚を
その肉を

そのナカを…

総てを僕の思いのままに解体出来るなんて…!


ソソられないわけがない。



僕はうっとりとした眼差しで目の前のメスの下顎に掛けた手を一旦離すと、その頬に一筋伝う涙の跡に沿って再びねっとりと指先を這わせた。





「…ククッ、さっそく始めようか…

興奮し過ぎて僕がイッてしまう前に、ね…」







開始合図の口付け、

―僕は麻酔薬を己の口に含ませた。



 E N D.2008 *20090329*
 

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