ぶ り ー ち

□その言葉、まるで… [後編]
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「やほ!」

「………。また貴様か、」


ノイトラ様の代わりに扉を開ければ、先日も顔を合わせた女がそこに居た。



「ね、ノイトラ居るー?」

「……ノイトラ様、如何なさいますか」

「ぁあ?とりあえず入れとけ」


相変わらずのぶっきらぼうで愛想のない返事だったが、それに自分も短く返すと目の前の女に視線だけ送った。



「……。お邪魔しまーす」


するとすれ違い際、ありがとうと礼を言われた。

その事に疑問を感じつつも自分も立ち位置に戻ると、彼女はノイトラ様と何か話しているようだった。



「…あの、さ!」

「ああん?」

「これ…ザエルアポロが、」


そう言って彼女がノイトラ様に差し出した物は、以前自分が淹れてやった事のあるあの紅茶葉だった。

その意外な品物に、ノイトラ様まで驚いているように見えた。



「……あいつ、何企んでやがる?俺様はオメェに感想を言えっつったんだ。説明しやがれ」

「えぇと…とりあえず使えば分かるからあげた方が早いだろう、ってザエルアポロが…」


目の前の小さな野ウサギに今にもノイトラ様が襲いかかりそうで。
だけど勝手な行動を許されない自分はただその様子を静かに見ていた。


ガタリ…とだるそうに椅子から腰をあげ、遠慮して座りもしなかった彼女の胸倉をあの時のようにノイトラ様は掴む。



「!!」

「だったらテメェがまた犠牲になってくれんのか?ぁあ?」

「……っい―…」

「、あ?」


「ならない!」


そう言って刃向かった野ウサギに、自分はもちろんノイトラ様も意表をつかれたらしい。

思わぬ抵抗に興醒めしたようにノイトラ様はするりと彼女を遠ざける。



「……だったらさっさと出ていけ。二度と俺の前に現れるんじゃねえ」

「っ、」


ジャラリと金属が鳴って解放された彼女は、ただ無言でこの場から駆けて行った。





「…ノイトラ様」

「……」

「本当にあれで良かったのですか?」


―あなたならそのまま力ずくでねじ伏せる事も出来たはず。

重ねてそう言おうとした言葉は、ノイトラ様の低い声に阻止された。





「やっぱしあん時…カッコつけねぇで犯しときゃ良かったのかもなァ?」


テーブルに置かれたティーパックをノイトラ様の細い指がつまみ上げる。

その指先にはまるで殺気がなく、珍しく穏やかだった。



そんなノイトラ様が少しだけ不憫で。
静かに目を伏せると、閉じた真っ暗な闇に再び低い声が響いた。




「ッハ、俺様に綺麗事なんて似合わねえ…。バカらしくて反吐が出るぜ、テスラ…」




 E N D.
2009 04 28.*20090428*
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