サイクロ

□feline fangの日常
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手を掛けると小さくカチリと刀が鳴った。

今日も斬らせてやるよ。人も物も、たっぷりとな。

漆黒のスーツを翻し、クロは笑みを深くした。



壊すのは楽しい。
形あるモノが崩れていく様は何度見ても体験しても厭きることがない。

こういう時、『あぁ、自分は壊れている』と自覚する。

物も人も同じだ。
ただ同じに見ている。

でも、自分の周りの『モノ』

人だろうが物だろうが関係なく自分の周囲は違う。
壊したくない。

『アレ等』は特別で別格。

壊したくないし、壊されたくない。
傷つけたくないし、傷つけられたくない。
何故か同じにはならない。

壊すのが好きなくせに壊したくないなんて笑える話だ。

笑える話だが、事実だから仕方ない。

自分にとって『アレ等』は自分を構成する上で必要不可欠な存在。

その内のどれかが一つ欠けても困るのだ。

面倒で厄介でウザイのに大事で大切で執着している。

本当に笑い話だ。
なんて矛盾しているのだろう。

相反する性質が溶けて交じって絡まって、『オイラ』は存在する。

もしも、どれかが欠けていたら『オイラ』は『オイラ』であって『オイラ』じゃない。

この『自分』を造り上げたのは『オイラ』ではなく『アレ等』なのだ。

だから、こうなったのはオイラだけのせいではなく、コイツ等にも原因がある。

決して言い訳ではなく、単純明快な事実なのだ。

事実なのに、現実は上手くいかないものだ。


「毎度毎度、何であんなに壊すんだお前はっ!!」

いや、お前だって壊し・・・何でもありません。

「もうちょっと加減してよ!!」

いや、それはお前にそっくりそのまま返・・・何でもありません。

「よーっ!!」

お前、人が大人しくしてりゃあいい気に・・・ハイハイ分かりましたよ!!

「・・・・・・オイラガ悪カッタデス。ゴメンナサイ」



あぁ、今日も言えなかった。

実はお前達が原因だなんて言ったら、確実に飯抜きにされるだろうから。



おわり。







簡単に言えば自分は自分一人では造られないって話。

外見じゃなくて中身の方ね。

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