サイクロ
□雲について
1ページ/1ページ
雲は水蒸気の塊で、正体は霧と同等だ。
勿論、掴むことは出来ない。
フワフワとした形状は温かそうに見えるし、心地良さそうだ。
だがしかし、実際は雨を降らせられるくらい冷たくて、オマケに汚い。
あの白い外見に騙されていたと自覚した瞬間の其れが、大人への第一歩に繋がるはずだ。
今、この場で遊んでいる子供達はそんな雲の正体を知っているのだろうか。
何も知らず、夢と現実の硲で生きているのだろうか。
知っていて、それでも夢を見ているのだろうか。
そんなことを考えながら、オイラは元気に走り回っている子供に視線を向けていた。
此処は公園。今は夏梅と未弥を待ちながらギーコギーコとブランコを揺らしている最中。
因みに時刻は夕方なので順番待ちは存在しない。
目付きの悪い高校生が独りでブランコを漕いでいる。
端から見たらなんと不気味な光景か・・・・。
「・・・オイラも行きゃあよかったかな」
暇だから余計なことにまで気が回る。
あぁ、暇だ。
「子供か・・・」
そういえばオイラの子供時代は案外短かったような気がする。
まぁ、精神が幼かったっていう話だ。
最終的には白昼夢やら夢の中やらで『クロ』と逢った時にその記憶を継いでしまったからだろうが、物心付いた時にはそんな状況も、断片的にではあるが過去の出来事も理解できていたのだから本当に今更の話だ。
でも偶に『もしも・・・』と思うときがある。
もしも子供だったら。
良い意味でも、悪い意味でも、過去を何も知らない普通の、ただの子供だったら・・・。
オイラは普通の子供として夏梅と出逢っていたかもしれない。
そしてそのまま何も知らないまま未弥と出逢い、剛と出逢い、時を過ごしていたかもしれない。
今となっては考えても仕方のないことだと分かっていても、偶にその考えに囚われる。
そんなことを考えていたら随分と時間が経っていて、空は綺麗な夕焼け色。
家族に呼ばれ、子供達が別れを告げて帰って行く。
そういえば、この人生でも世間一般に言う『家族』というものを少しの時間しか体験できなかった。
死に別れてしまった両親から沢山の愛情を受けた記憶はもう随分と古い。
それでも、幼い頃にこんなにも普通に『死』を受け入れられたのは『クロ』であった自分が強いからかもしれない。
今の所、ざっと見て人間3の猫7くらいの割合だろうか。
多分、未弥も似たようなものだ。
子供時代特有の『寂しい』よりも『仕方がない』って感情が強いっていうのはそういうことだ。
なんとまぁ、人生経験豊富なガキンチョだこと。
「あぁ〜・・・女々しい。オイラにゃ似合わねぇな」
オイラはいつでも不敵に笑って辺りや周囲をドタバタさせているのが性に合っている・・・と、とりあえず自分ではそう思っているんだが。
「・・・今更過去がどうこう言ったって始まらねぇしな」
「そうだね。ボクもその意見には同感だよクロ」
「・・・・・・ッッ!!!?」
背後に音も無く(気配も無く)現れた未弥に一瞬声を失う。
いつから聞かれていたとか、女々しい自分を見られたらとかじゃなくて。
「吃驚するからその登場の仕方はヤメロ!!」
「エェ〜ッ!!クロを驚かせるの楽しいからヤダ〜」
「テメェは・・・昔っからそんな性格だったなあぁーーッッ!!」
「やーい、クロの怖がり〜!!」
公園内で追いかけっこを始める変てこな高校生2名。
端から見たらスゴく近寄りたくない雰囲気の中。
「何やってるんだ?そこの2人」
スーパーの袋をぶら下げて現れた強者、夏梅は呆れながら2人を呼び止める。
「・・・何でもない」
「・・・?そうなのか?」
「うんうん。何でもないよー。ねぇクロ〜?」
ニヤニヤ笑う未弥は放っておいて夏梅の持っている袋を奪う。
「それくらい持てるぞ」
「いいんだよ。お前は手ぶらで」
「やっだぁ〜クロちゃんカッコイイ〜」
・・・ふざけている未弥には拳骨を一発お見舞いした。
未弥が「暴力反対ーっ!!」と半泣きで後ろから叫んでいるがとりあえず無視。
「今日は未弥ん家でいいんだろ?ほら、サッサと行くぞ」
笑いながらオイラが歩き出すとその後ろを少し不満顔の夏梅が、更に後ろを頬を膨らませた未弥がついてくる。
そう。この感覚だ。
やっぱり、こういうのがいい。
オイラはこの賑やかさの中心にいるのが1番落ち着く。
きっと過去の記憶が有ろうと無かろうと、この本質に大して変わりはないのだろう。
雲は水蒸気の塊で、正体は霧と同等だ。
掴むことが出来ないどころか、雨を降らせられるくらい冷たくて、オマケに汚い。
それでも、フワフワとした形状は温かそうに見えるし、心地良さそうに見えるのだ。
子供が大人になってその事実を知ったとしても、そう思ったことは決して嘘ではないのだ。
おわり
コメント
何かグダグダでもう本当にごめんなさいとしか言い様がないんですごめんなさい許して下さい勘弁して下さい。
でも、苦情は受け付けません←