サイクロ
□マタタビの金色の長髪が肩辺りでスッパリバッサリ切れました。
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満月の晩、相手側に手紙を送りつけ、改心しなければ朔の晩にそこに属する総ての命を刈り取る殺し屋『feline fang』
今宵は新月。
彼等は殺し屋稼業に精を出し、柄の悪そうな連中にぐるーっと四方八方辺り一面を囲まれながらも余裕の笑みを浮かべていた。
「今日は随分と客が多いな」
軽やかなステップで敵を挑発し、遠距離を銃、近距離を剣で仕留めている真っ黒な男。
一応『feline fang』リーダーのクロ。
別名『破壊のプリンス』
「正しく有象無象だな」
立っている位置から殆ど動かず、愛用のブーメランで近距離の敵を斬り伏せた後、遠距離の敵を一掃する赤い外套の男。
『feline fang』撹乱その他何でも担当のマタタビ。
別名『歩く武器庫』
「いい加減しつこいよねー」
サクサク歩きながら寄ってくる敵に一瞥もくれず、舞うように斬り伏せていくコックさん。
『feline fang』潜入、諜報担当ミーくん。
別名『愛の料理人』
「数がサッパリ減りませーん」
全体を見渡していた上空から勢いを付けて急降下し、硬質化した翼で一気に敵を切り裂いていく一羽の鴉。
『feline fang』後方援護担当トキマツ。
別名『夜の帳』
百戦錬磨の彼らにとってこの程度の相手は正しく雑魚で、いつものように全滅させるのは時間の問題・・・の筈だった。
斬り伏せた一人が死の間際、最後の力を振り絞って一撃を食らわせようとマタタビに詰め寄る。
視界の片方が無いマタタビはそれが弱点と敵に狙われることが多々ある。
「おいマタタビ!!」
気付いたクロが慌てて呼ぶがマタタビは『お前は誰に言っているんだ?』という表情で攻撃を交わし、首を落とす。
・・・しかし、その執念の一撃は確実にマタタビを掠めていた。
正確には、攻撃を躱したマタタビの金の髪を。
ハラリハラリと宙を舞い落ちる金の糸に『feline fang』一同の視線が釘付けになる。
一番最初に我に返ったのはマタタビ。
地面に落ちた自分の髪をぽけーっと見つめるとバッと顔を上げ、そして驚きの声を上げた。
マ「うぉっ!?頭が軽い!!」
頭を振ってはしゃぐマタタビを視界に入れ、次に我に返ったのはミーくん。
ミ「うっわ〜・・・コレはまた何というか・・・随分バッサリいっちゃったねー」
首筋や肩に引っ掛かった髪を払いながら苦笑する。
ク「・・・・・・・・」
ト「・・・・・・・・」
ミ「毛先がバラバラになってるね。帰ったら揃えてあげるよ」
マ「あぁ。頼む」
ク「・・・・・・・・」
ト「・・・・・・・・」
囲まれたままだというのに髪を摘みつつ、のほほんと会話するマタタビとミーくん。
そして地面に散らばった金の髪を見つめたまま沈黙するクロとトキマツ。
敵さん方はその2人様子が不気味で近寄ってこない。
その様子気付いたマタタビが不思議そうに、ミーくんが呆れて2人を見る。
マ「アイツ等はどうしたんだ?」
ミ「マタタビくんの髪が切れちゃったのがショックなんだよ」
マ「当事者の俺よりもか?」
ミ「多分ね」
ク「マタタビのサラサラでツヤツヤでキラキラしてる長くて綺麗で完璧な髪が・・・」
ト「兄貴の朝焼けにも負けないくらい美しい金色の髪が・・・」
遂にはどす黒いオーラを垂れ流しながらブツブツと呟き始め、声を揃えて叫ぶ。
ク&ト「「あんな奴らに!!」」
敵「「「「違います!!」」」」
マ「いや、やったのは此処でくたばってる奴なんだが」
ミ「二人にとっては敵なら誰でも同じなんだよ」
(八つ当たり要因はね)
ク「全員ブッ殺す!!」
ト「皆殺しです!!」
マ「いつもと変わらないじゃないか」
こうして『feline fang』はまた一つ、悪の組織を壊滅に導いたのでした。
おわり。