サイクロ

□『feline fang』
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大きな音を立ててドアが蹴破られた

男は反射的に銃を構える


コツコツと靴を鳴らしながら入ってきたのは、銃を握る一人の若い男

黒い髪に黒い瞳、黒いコート、黒いブーツ

上から見ても下から見ても何処から見ても真っ黒な気味の悪い男だ


「お前・・・!?どうやって此処に入った!?部下達はどうした!?」

「オイラの名前はキッド。見ての通り、そこのドアを蹴破って入ってきた。勿論、アンタの部下達を蹴散らしてな」


キッドと名乗る男が歩を進めるその小さな音がやけに大きく響いた

楽しそうに笑いながらキッドは尋ねる

「覚悟はできたか?まぁ、できてようとできてなかろうと貰うモンは貰ってくけどな」

「・・・・私を殺しに来たのか?」

「まぁな。アンタには手紙を送った。読んでくれたかい?」

「・・・・・・あぁ。読んだよ。お前達の犯行予告は有名だからな」


『feline fang』はこの辺りでは有名な殺し屋だ

腕は確かで、仕損じることはまず無いという保証付きの


「じゃあ仕事の時間だ。アンタ、言い残すことはあるかい?」

「・・・もし、あったとして・・・伝えてくれるのか?」

「ハッ!!まっさか〜」

「そう言うと思ったよっ!!」

銃弾はキッドの頬を掠めて髪を数本散らし、ドアに突き刺さった

「殺されるつもりは無い!!」

「・・・分かってネェなぁ」

「何だと!?」

キッドは流れた一筋の血を拭ってペロリと舐め、「不味っ!!」と呟いた

「アンタは死ぬ。オイラに殺されて死ぬ。それもたった今な」

「フンッ!!お前が構えるより先に私が撃つ方が早い・・・死ぬのはお前だ!!」

放たれ、キッドの額を貫通する予定だった銃弾はキィィンという澄んだ音に消えた

キッドの手にはいつ構えられたのか分からない一振りの刀が握られている


「オイラの得物はコッチ。銃はさっきアンタの部下から貰った安モンだ」

「チィッ!!」

二発、三発とキッドを狙うが、総て刀よって切られ、弾かれてしまう

カチカチと引き金を引くが虚しい音が響くだけで何も起こらない

「そろそろ終わりか?」

目の前まで来たキッドが犬歯を剥き出して笑う

「それじゃあな、ボス」

目の前に迫る白銀の切っ先

それが、とある組織のボスが見た最期の光景だった
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