サイクロ

□『feline fang』
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「ヤッホー。クロー、ボスはー?」

『よぉ、ミーくん。仕事完了だ。ちゃ〜んと殺ったぜ』

「そう。じゃあそろそろお暇しなきゃね」

「ミーくんっ!!」

名前を呼ばれてチラリと視線を向けると、銃を構えてカタカタと震える手下A

彼は誰だったっけ?
名前はもう覚えてない

彼が名前を知っているのは、今日の昼までボクがこの組織の雇われコックだったからだ

今回、ボクの担当は組織への潜入と諜報とクロがボスを殺すまでの時間稼ぎ

だからたった今、ボクの役目は終了した・・・筈だった

「あー・・・まだ残ってたみたい」

せっかく苦しまないで眠るように死ねる薬を混ぜたのに彼はまだ晩ご飯を食べていないらしい

『んじゃあマタタビに言っとくわ。早く来いよー?』

「はーい。了解」

携帯をしまう間も手下Aはジッとボクを見つめたまま動かない

信じたくない気持ちと現実との狭間で混乱してる

いつものことだけどさ、せっかく隙だらけなボクを狙うチャンスだったのに、みすみす逃すなんて残念だなぁって思っちゃうんだよね


「ゴメンね、騙してて」

「まさか・・・きみが・・・・殺し屋だったなんて!!」

「うん。ゴメンね」

さっきのゴメンねは、騙してたから悪かった・・・のゴメンね

こっちのゴメンねは、ボクはキミを殺すから・・・のゴメンね

両手に構えた二本の包丁は毎日手入れを欠かさないボクの愛刀

料理人に包丁は必須アイテムだもん

まぁ、コレは戦闘専用の特別製なんだけど

「クロがボスを殺ったから、ボク達は帰るよ」

「ボスがっ!?」

邪魔をしてもしなくても、キミに生き残るという選択肢は残されていない

「料理人のミーくんの時間はこれでお仕舞い。今からは殺し屋のミーくんの時間だから」

殺し屋は優しくない
手加減なんてしないよ?


一気に間合いを詰めて彼が構えていた銃を蹴り上げる

動揺してるおかげで動きは鈍い

宙に向かって一発発射されただけで、彼の身を守る武器は手の届かない場所へ弾かれてしまった

組み敷いた彼の上で、構えた二本の包丁をカチンッと鳴らす

彼はガチガチと歯を鳴らしながら涙を流しながら「助けてくれ」と呟いている

だけど、それは無理な相談だから笑って応えてあげた

「ゴメンね。殺し屋ミーくんは非情な男なんだ」

大丈夫。痛くしないよ

一撃でシトメてあげるから安心して殺されてね
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